「超」整理手帳がデジタルになったことで、各種データとの連係ができるようになったのも大きなポイントだ。予定に目的地の住所の詳細や“東京大学・駒場”といった固有名詞を記入しておけば、Googleマップが起動して地図を表示する。
「いちいちアプリを出なくても(「超」整理手帳iPad版の中だけで)使えるのです。今までは地図をプリントアウトして(手帳に)挟んでいましたよね」
画像のひも付けも可能だ。「カメラロールに保存している画像やPC内の地図をひも付けできます。その日に使う画像をスケジュールに関連付けていくのです」。これは日付順、時系列にモノを整理する“「超」整理法的”な考え方といえる。
ゆくゆくは、Gmailの情報と日付の関連付けも考えているという。「Gmailは時系列ではなくスレッド順で表示されます。これも便利ですが、iPad版では添付ファイルやメールのコピー(またはショートカット)を貼り付けたい。そうすれば時間順に整理できます」
すべてのメールの内容をスケジュール欄に張り付けるのは現実的ではない。そこでメールにタグを与えたり、フィルタリングしたりする方法を検討しているという。
「iPad版が仕事の母艦になります」
野口教授は続ける。「今日の仕事をiPad版でチェックする。iPadはタスク、スケジュール管理やファイル確認が主な用途です。そしてPCでは、原稿執筆などの入力全般を行うというように使い分ける。仕事におけるiPadとPCの役割分担を明確にできるのです」
野口教授はこれまでに、「モバイルギア」(NEC)などのデジタルツールを積極的に使ってきた。その上で「超」整理手帳のデジタル版を作ろうと考えたのは、それ以前の端末にはiPadの面積がなかったからだという。
iPad版は、上述のような完全な8週間連続スケジュールの表示ができ、ToDo欄を備える。Googleカレンダーとの同期はもちろん、各種ファイルとの連携も可能になる。単なる手帳を超えたツールになっている。
1990年代後半に登場して以来、ずっと紙の製品として販売されてきた「超」整理手帳が、iPad版によって大きく変わろうとしている。「iPad版の登場によって、仕事の母艦になる可能性が見えてきた。これは「超」整理手帳の大きなエポックの1つです」
しかし、紙の手帳はなくならないと野口教授は話す。「iPadは重く、常に持ち歩くわけにはいきません。また入力のスピードは紙が圧倒的に速いですし、話しながら書き込みができるのも紙(ならではの特徴)です」
野口教授によれば、iPadを含むデジタルツールは紙の自由度をまだ再現できていない。「紙ならば大事な内容を大きな字で書いたり、赤色で目立たせたりできます。また「超」整理手帳のように3段に分かれた記入欄があると、上段が午前中、中段が午後、下段が夜というように、紙面に自分なりの見立てを作ることができます」。一方、電子的な手段は杓子定規であり、紙と同じことを再現するのが大変だという。
「紙の自由度の高さが電子的に再現されることはありえますが、紙そのものは再現できない。半面、検索は紙では絶対できません。手帳に限らない話ですが、紙とデジタルが得意な分野を理解することが大切です」
iPad版とともに紙の「超」整理手帳も併用していくという野口教授。紙の手帳を基に生まれたデジタルな手帳「超」整理手帳 for the iPad。各種ファイルや地図、メールとの連係機能はPC用のツールを代替する可能性を持っている。計画中としているiPhone版とともに、今後のバージョンアップに期待が掛かる。
アスキー勤務を経て独立。手帳やPCに関する豊富な知識を生かし、執筆・講演活動を行う。手帳オフ会や「手帳の学校」も主宰。主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)など。
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