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» 2013年06月04日 10時00分 UPDATE

トップ1%の人だけが実践している思考の法則:想定しなかった市場機会を発見したPayPal

小さな実験を繰り返しながら分析をして全体を修正していく。成功の裏にはそうしたことの積み重ねがあるのです。

[永田豊志,Business Media 誠]

 成功する一握りの人々だけが実践する共通の「思考の法則」を知るには、いったん私たちが常識だと考えてきたルールをリセットする必要があります。そして彼らの行動や考え方に注目し、そのエッセンスを吸収して、その根底にある思考のサイクルを身に付けることが重要です。

 成功者はみな、次にあげる5つのビジネスプロセスを何度も、高速回転で循環させています。私は、キーワードとなった5つの英単語の頭文字をとって「5Aサイクル」と呼んでいます。

  1. 顧客の抱える問題の「認知」(Awareness)
  2. 問題解決のための従来と異なる「アプローチ」(Approach)
  3. アイデアのスピーディな「実行」(Action)
  4. 仮説と実行結果の差異に対する「分析」(Analysis)
  5. マーケットニーズに合わせた柔軟な「適応」(Adjustment)

 各プロセスについてもう少し、詳しく説明しておきましょう。今回は第4のプロセス、「分析(Analysis)」です。

失敗したから、プランBで成功できた

shk_nagata1701.jpg 失敗することを前提に計画をすべきです。失敗は、成功方程式を得るための貴重なデータ収集の機会。失敗の多さは無能さを示すものではなく、成功法則のデータを豊富に持っているのです。さあ、思い切り失敗しましょう

 オンライン決済のPayPalは、当初、携帯端末のセキュリティサービスを手掛けていました。そのデモ版として作ったWeb決済サービスが、eBayなどのオークションユーザーの間でまたたく間に人気となりました。PayPalは、本来意図していた成功ではなかったものの、想定しなかった市場機会を発見したのです。

 分析(Analysis)で重要なのは、自分の仮説や想定と実行結果との違いに着目すること。実行結果が思いもよらぬ低い数字、低い効果、低い反響になることは少なくありません。しかしそれ自体はさほど驚く必要もないし、絶望すべきものではないのです。重要なのは「想定していなかったもの」がどれだけ発見できたのか、ということです。

 ビジネスにおける分析は、科学シミュレーションではありません。どんなに精巧なモデルを作っても完全な方程式を得ることはできない。実際にやってみれば、そのほうが貴重なデータがかんたんに手に入る世界です。

 ヤマト運輸が宅配便に参入したときのこと。当時、運輸会社は長距離かつ大口輸送が1番儲かると信じられていました。しかしヤマト運輸の小倉社長は、個人の1個ずつの荷物の強いニーズがあることと、荷物の利益率は小口なほど高いことに気づいていました。顧客のニーズとビジネスの収益モデルは頭にあったので、あとはその仮説を実証するための協力を社内外に得ることが、最も大変だったわけです。

ビギナーズラックの人がうまくいかなくなる理由

 成功のためのデータは失敗からしか得られません。失敗の回数が多いのはネガティブなことではなく、成功するためのデータが豊富であることを意味します。1回目に成功するビギナーズラックの人が長続きせずにすぐ失速するのは、そのためです。データ不足なのです。一方で下積みの長い人は、成功した後に安定する傾向があります。これは単に精神論ではなく成功をし、それを維持するために必要なデータの有無の問題なのです。

 もちろん、何度も失敗することを前提にするのですから1発の失敗ですべてを失うような賭けをやることはありません。何度でもチャレンジできる、その前提で思い切り失敗しましょう。そのためにも、小さな実験を繰り返しながら全体を修正していく、そうしたスタイルが最終的には高い成果を生み出すのです。

 試行錯誤から生まれたデータは重要です。実行によって得られる一番の果実であり、ダイヤの原石といえます。しかし、そのデータの見方はもっと重要です。

 単なる数字の塊からメッセージは出てきません。商品の1つ1つ、顧客の1人1人の定性的なデータをピックアップし、自分なりに仮説を立てながら分析しないと大事な顧客のメッセージ(声なき声)を見失うことになります。


 なお本連載の基となった『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)では、5Aサイクルの具体例として、グーグルのほか、ダイソン、アマゾンなど今をときめくイノベーティブな企業群のエピソードを18のケースストーリーで紹介しています。

集中連載『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』について

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 本連載は2012年12月19日に発売した『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)から一部抜粋しています。

  • なぜ、Amazonは「大量の小口注文」をさばけるのか?
  • なぜ、Googleは「独自の検索システム」を編み出せたのか?
  • なぜ、ディズニーランドは「夢」を売ることができるのか?
  • なぜ、ダイソンは「羽根のない扇風機」を開発できたのか?

 本書は、イノベーションを起こして、ビジネスで勝ち残るための「思考法則」についての解説書です。これからの働き方は、大きく変わります。今まで通りに目の前にある仕事を頑張って働くのではなく、新しいイノベーションを起こしてソリュ―ション(問題解決)することが不可欠になります。本書はあなたの仕事にイノベーションを起こすために、トップ1%のできるビジネスマンだけが実践している「思考の法則」を著者、永田豊志氏が見つけ、分かりやすくまとめたものです。

 「営業」「企画」「経理」「総務」「財務」「マーケティング」――など、あなたが何を専門に従事しているかはまったく関係ありません。すべてのビジネスパーソンに必要な「思考」だからです。ぜひ、本書を読んで、変化の激しい時代に、あなたがたくましく生き残れるよう役立ててください。

著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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