さらにiPadアプリでは、より詳しい売上情報の確認ができるようになった。iPhoneアプリからは、その日の売上を確認することしかできず、日付や商品、カテゴリーを指定して売上を集計をするにはWeb上の管理画面から操作する必要があった。新たに登場したiPadアプリには売上集計機能が用意され、「取引履歴」から集計したい条件を指定すれば、サーバ上にある売上データを読み込み、その結果をiPadの画面上に表示する。
わざわざ“PCのある場所まで行って立ち上げる”ことなしに、その場で手にしているiPadから売上を確認できるのは時間の節約になるだけでなく、日々の売上に応じた臨機応変な販売施策の調整にも役立つだろう。
さらに本格的なレジ機能を求める店舗向けには、ソフトバンクのパートナーであり、長年POSサービスの開発を手がけてきたヴィンクスのPOSソリューションを用意している。
このソリューションは、ドロワーやレシートプリンタ、高機能POSアプリなどをセットにしたもので、店舗のニーズが高い釣り銭登録などの現金管理にも対応している。PayPal Hereと連携してるのはもちろん、今後は店舗の各種情報を活用したO2Oサービスにも対応していく計画だ。
2つ目の施策は、安価に運用できる“PayPal Here専用スマホ”の提供だ。PayPal Hereを利用する際、店舗専用のスマートフォンを新たに契約したいという声が多かったことから提供を開始した。
Androidスマートフォン「STREAM 201HW」と「PayPal Here」専用カードリーダーに、低速データ通信専用の料金プランを合わせたキャンペーン用パッケージを用意。キャンペーン期間中に申し込むと、月額3880円の通信料が無期限で半額以下の月額1435円になり、“PayPal Here専用スマホ”を月額1750円(パケット専用低速プランの1435円とS!ベーシックパックの315円を合わせた金額)で使えるようになる。
これまでは、コスト面で専用端末の導入が難しい場合は、店舗のオーナーが私用端末でまかなうことも多く、「オーナーの外出中にはクレジットカード決済ができない」「決済のためにオーナーの私用端末をレジ付近に置きっぱなしにするのは不便」といった声が挙がっていたという。今回のキャンペーンで導入のハードルが下がれば、こうした問題も解決されそうだ。
手軽にクレジットカードシステムを導入できることが注目を集め、今やモバイル決済の市場にはSquare、楽天スマートペイ、コイニーといった競合が参入し、シェア争いが激化している。こうした中で、PayPalが強みとして挙げるのは“通信キャリア(ソフトバンクモバイル)との連携”。その理由は、クレジットカード決済システムには“通信”が欠かせないものだからだ。
せっかくカードリーダーや優れたアプリ、またスマートフォンやタブレットがあったとしても、通信環境が整っていなければ信用照会を行えず、決済サービスを提供することができない。PayPalは通信キャリアと組むことで、屋外の催事や移動販売、地下の店舗など、電波の入りづらい環境にある店舗の導入支援もできるというわけだ。
「訪問先や移動先で通信できない環境があれば、PayPal Hereの場合、ソフトバンクモバイルに電波状況の改善を依頼できる。どこの通信キャリアとも組んでいないサービスでは、どこに依頼すればいいか判断が難しい」(説明員)
さらに、店舗が「PayPal Hereの使い方が分からない」と思ったときに、専用のコールセンターでサポートを受けられるという強みもある。ほかの同様のサービスはメールのみの対応がほとんどで、キーボードに向かうのが得意ではないような経営者にとってはハードルが高い。PayPal Hereなら、専用のコールセンター(9時〜20時、年中無休)に電話してオペレーターに相談できるので、利用者も心強いだろう。
他社にさきがけてサービスを開始したPayPalは、次々と新たな施策を展開しており、決済サービスについても、財布を出さずに“顔パス”で決済できる「チェックイン」や、“行列知らず”の買い物スタイルを実現する「Order Ahead」がひかえている。先進的な決済サービスを、中小店舗が大規模店舗にさきがけて導入できるようになった今こそ、店舗改革の絶好のチャンスといえそうだ。
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