Discodeerは、Lyricaと同じように歌詞が表示される音楽再生アプリです。ただし、Lyricaでやり残したことや実現できなかったことを全部詰め込みました。その曲の世界観に浸りたいときにバナー広告は邪魔でしょ? とか。結果的にLyrica以上にユーザーからの評価が高く、収益も上がりました。
DeNA(※2)さんのプロジェクトに参加することになったのも、Discodeerと僕らの開発チームを高く評価していただいたことがきっかけになりました。新しい音楽サービスを考えているのでDiscodeerチームと一緒に仕事がしたいと声を掛けてもらい、サービス全体の設計をお手伝いをしたのがGroovy(グルーヴィー)です。Groovyは、スマートフォンユーザーを対象に、音楽の趣味の近い人同士が簡単にオススメしあったり交流できたりするサービスです。趣味が近い人が気になっている曲を、アプリ内で気軽にフル視聴できる新しい取り組みもあり、リリースまでのお手伝いでしたが、今後の進化に期待しています。
Web業界に限ったことかもしれませんが、就活生が会社説明会に行って、たくさんの人たちと同じスタートラインから勝負するのは、すごくもったいない気がする。本当にその業界に行きたいなら、自分からもっとアピールしないと。情報収集も、自分を表現する方法もいくらでもある。自分を売り込むためにアピール用のサイトを作って就職した人もいます。今はイベントやセミナー、Twitterなどで関係者とネットでつながれる時代です。そう考えるとスタートラインが同じなのはもったいないです。
僕の場合はWebが好きだったのはもちろん、インターネットでお金を稼ぐことに興味がありました。その中で画期的だったのはアフィリエイトでした。自分のサイトで商品を紹介して、誰かが購入すると自分にお金が入ってくる。これってすごい仕組みだなと思って、アフィリエイトで業界1位の会社を受けに行きました。面接では、僕は営業をやりたくなかったので、エンジニアでも業界経験者でもないのに「サービスを作らせてください」と言いました。アフィリエイトを使ってサイトを運営していたことや、それで収益をあげていたことが採用の理由らしいのですが、いま考えると学歴も経験もないのによく採用されたなと思います。
アフィリエイト会社に入社後、本当は音楽サービスの事業を立ちあげたかったのですが、2年間はやらせてもらえませんでした。検索ポータルや比較サイトを作っていたら、ようやく「あいつにそろそろ何かやらせてみよう」という空気になった。だから僕は「就職したら2年は我慢」と後輩に言っています(笑)。そして、最初に作ったのが歌詞サイトでした。当時は着うた全盛期だったのですが、着うたを購入しても歌詞が分からないのが残念だなと思ったのがきっかけです。やってみたらやはり需要があって、歌詞サイトでシェアナンバー1になりました。
「この歌詞サイトで閲覧数1位を取ったら、レコチョクでも1位とれる」みたいなイメージがついて、徐々に有名アーティストの広告掲載の依頼が来るようになってきました。
とくに木村カエラ(※3)さんの「Butterfly」の相談が来たときはうれしかったです。(つづく)
山口哲一(やまぐち・のりかず)
1964年、東京生。早稲田大学第二文学部中退。音楽プロデューサー、コンテンツビジネス・エバンジェリスト。
株式会社バグ・コーポレーション代表取締役。『デジタルコンテンツ白書』(経済産業省監修)編集委員。
主な著書に『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)、『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』(リットーミュージック)、『ソーシャルネットワーク革命がみるみる分かる本』(ダイヤモンド社・共著)などがある。
Web連載:
WEDGE infinity「ビジネスパーソンのためのエンタメ業界入門」
CREAweb「来月、流行るJポップ〜チャート不毛時代のヒット曲羅針盤」
誠ブログ:
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