機能不全のチームには「思い」「共感」「コミュニケーション」がない ライフネット生命 出口氏に聞く、最強チームの作り方【後編】ベストチーム・オブ・ザ・イヤー(2/2 ページ)

» 2014年03月10日 11時00分 公開
[ベストチーム・オブ・ザ・イヤー]
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出口氏: 「共感」が大事になります。仲間を集めるには「共感力」が必要なのです。強い思いは、共感にもつながりやすい。「あまり好きな人ではないけど、あそこまで思い詰めているのなら、私が助けなければ」というメンバーが出てくる。人に影響力を出せるのは、強い思いによるものです。

 「共感」のベースは、やりたいことや思いによるものです。人格力や人間力ではありません。この人物はいい人で大好きだけど、リーダーとしてはイマイチという人もいます。また「給料がもらえるから」とチームに加わったメンバーではいずれ面従腹背になりますよ。強い思いがなければ、チームは成り立ちません。

 そのチームに思いが浸透すれば、後はメンバーが補えばいいのです。これは伊賀泰代さんの名著「採用基準」に書いてある通りで、メンバーもリーダーシップを持たなければいけません。全員が参加意欲――リーダーシップ――を持つ。リーダーだけにリーダーシップを求めると、チームは失敗するということです。

―― メンバーによって、思いの強さに違いがありそうです。

出口氏: 思いが小さければ小さいチーム、大きければ大きいチームができる。それだけのことですね。これは古今東西の歴史が証明していることです。夢が大きければ大きいほど、たくさんの人をひきつける。太鼓を強く叩けば大きく響く、弱くしか叩かなければ音は小さくなる。同じことですよね。

―― リーダーシップは訓練によって身につくものでしょうか?

出口氏: そうです。そのためにはたくさんのケースを知っておく必要があります。「こういうピンチの時、人はこういう対応をしていた」と考えられますから。逆に、知らなければ何も手が打てないのです。

 メンバーにもリーダーシップを持ってもらうには、ケースを知っていて、強い思いがあるということが不可欠。「共感」を呼び、「ケースを勉強させる仕組み」をリーダーが作り出せば、メンバーの気持ちは必ず動きます。

―― 出口さんがおっしゃる「仕組み化」とは?

出口氏: 「仕組み化」とは社会や会社のルールから考えてみるといいでしょう。例えば英語を勉強させるには、「TOFEL100のスコアを持ってこなければ採用しません」とする。公務員の世界では、試験がないと昇進できませんよね。これも1つの仕組みです。管理者になりたい人は試験を受けてくださいという公平な仕組みですから、管理者になりたい人は猛勉強しますよね。

 仕組みを作ることが、勉強することのインセンティブになります。「勉強しろ」といくら空念仏をとなえても、人は勉強しないものです。会社のチームでも同じです。「試験」をすればいいのではないでしょうか。楽天は英語の試験をしていますよね。試験は1つの例ですが、「メンバーがどうすれば働くのか」を考えることが必要です。

生き残るチームは「変化に対応できる」から。適材適所な楽しいチームを作ろう

―― 「機能しない」チームの特徴はあるのでしょうか?

出口氏: 変化に対応できないチームはいずれ滅びますよ。逆に、生き残るチームは強いからではなく、変化に適応できるからなんです。ダーウィンの進化論と一緒ですよね。世の中の変化に応じたシフトをしない限り、チームや組織は死んでしまいます。これは人類5000年の歴史が証明しています。

 20世紀の日本経済はうまくいきすぎたから、変化できないチームが出てきているのでしょうね。テレビで成功した日本企業は、いまだにテレビ万能という考え方でしょう。一方GEは、米国で100年残っている企業の1つで、かつては家電メーカーだったのが、今や家電の売り上げは数%です。自らが変わっていったのです。

―― 最後に、強いチームを作るための一番のポイントは何でしょうか?

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出口氏: 繰り返しになりますが、「適材適所」を考えることです。人間は自分の得意なことをやっている時が一番楽しいですので、それを生かせるチーム作りをすることです。あとは、楽しくなければイニシアティブは出てきませんので、楽しい毎日、楽しいチームを作ることですよね。

 素敵な女性とデートの約束をして、店はお任せしますと言われたら、必死に考えるでしょう。なぜですか? 楽しいからですよね。ところが嫌な上司から飲みに誘われた時は、一生懸命考えないでしょう。近場の飲み屋でいいから、など。それは楽しくないからでしょう。

 楽しいチームと面従腹背のチームでは、生産性は圧倒的に違います。人と社会の変化をよく見て、「適材適所」のチームを作り、変化に応じて人をメンテナンスすること。これが普遍的なチームの作り方ではないでしょうか。(談)

(取材・執筆:藤村能光、撮影:橋本直己)

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