店舗は、アプリ経由で購入された商品代金の10%を手数料として支払う。初期費用や月額費用はゼロなので、少ないリスクでECが始められる。
売り上げ拡大以外の効果もある。大手や高級ブランドショップを除くと、多くの店舗では、どの商品がいくら売れたのかは分かっても、それを誰が買ったのかというところまでは分からない。メンバーズカードを作って顧客情報を得たとしても、ダイレクトメールを送るぐらいしかアプローチができず、その開封率は10%以下というのが実情だ。
Origamiを使えばそうした手間をかけず、誰がどの商品を好んでいるのか、購入したのかがダイレクトに分かるようになる。また、同社ではITが苦手なアパレルや小さなショップなど一部の店舗に対して、データベース作成支援など販売側の環境構築も手伝っている。
さらに、康井氏は「これからのECはモバイルデバイスとの連携が強まり、決済ソリューションまで提供する大きなイノベーションが始まる」とも予想する。例えば、実店舗で目の前にある商品の詳細情報をアプリでチェックし、気に入ったらそのままアプリで決済し、商品は手渡しで受け取るといった流れだ。
「Origamiは、お店とお客さんを結ぶ透明な架け橋を提供しようとしている。すでに実現するための技術はあるが、お客さんの行動を変えることが課題。実店舗でアプリから商品を購入するようになるには、少し時間がかかることでしょう」(康井氏)
元々、シリコンバレーを拠点とするベンチャーキャピタル、DCM(Doll Capital Management)で、アジアのスタートアップの投資分析や経営戦略の支援を行っていた康井氏。なぜ、自ら起業家への道を選んだのだろうか。
「実は、16歳のとき、ECビジネスを立ち上げたことがある。その経験もあって、どうせビジネスをやるなら今の市場を変えるものにしたいと思った」(康井氏)
Origamiは、創業時に5億円の増資を受けるなど、日本のベンチャーとは少し違うスタンスで事業展開を進めている。
「シリコンバレーのベンチャーは無理だと思うぐらいの金額の増資を受けて、それを原資に成長を目指す。だから、TwitterやFacebookのように、創業から数年経っても売り上げが少ないのは普通。目先のマネタイズよりもITで世の中を変えるぐらいの発想で動いている。Origamiも同じで、次のステップは見えているけれど、とにかくコマース全体を変えるようなものを目指している」(康井氏)
日本とニューヨークに拠点を持ち、仕事と休みの境目もなく動いているという康井氏だが、自身は実店舗で商品を購入することが多く、「ふらっと入ったお店で衝動買いするのが楽しい」という。そうしたショッピングの楽しさをOrigamiで提供していきたいとしている。
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