「ゲーム機」と言うより、「Nintendo」「で、結局何が言いたいの?」と言われない話し方

相手に何かを話すときは、できるだけ具体的に言うことが大切です。固有名詞を適切に用いることで、自分の希望を確実に伝わりやすくなるのです。

» 2014年05月08日 11時00分 公開
[金子敦子,Business Media 誠]

集中連載「「で、結局何が言いたいの?」と言われない話し方」について

本連載は、金子敦子著、書籍『「で、結局何が言いたいの?」と言われない話し方』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。

 「そんなつもりじゃないのに……」
 「なんで、分かってくれないの!」
 「聞いてないよ、って言われても」

一生懸命話しているのに思った通りに伝わらない、話しているうちに伝えるべきことが分からなくなる……。こう感じたことがある人は少なくないのではないでしょうか。

本書では、「打ち合わせ」や「会議」「プレゼン」など、さまざまな場面におけるコミュニケーションのポイントを紹介。仕事で必要な「本当に使えるコミュニケーション能力」を身につけるコツをやさしくまとめました。

 ・伝わらないほうがあたりまえ
 ・表現だけでなく、中身も大事
 ・打ち合わせのゴールは、「誰が」「いつまでに」「何をするのか」
 ・プレゼンのゴールは、聞き手の成果につながること
 ・飲み会は「楽しむのが目的の会議」

「誤解なく、確実に自分の言いたいことを伝える力」が身につく1冊です。


「儲かっている」より、「営業利益率20%」

 私がアナリスト時代に学んだコミュニケーションのポイントに、「よい(positive)」か「悪い(negative)」か、話の方向を最初に示したら、「数字」で根拠や詳細を話すというものがあります。

 アナリストは売上高成長率が「高い」とだけ発言することはまずなく、「前年比15%増」などの数字を示します。「高い」とだけ言うと、「前年比何%?」と必ず尋ねられます。

 実際、「高い」の幅は業界や地域で異なるのが普通です。成熟産業では売上高が前年比で10%も成長すれば十分高いと思われるでしょうし、新興国や成長産業では「高い」売上成長率とは前年比30%増、あるいは前年比50%増を示すかもしれません。

 「数字」が役に立つのはアナリストにかぎりません。例えば「高い」お弁当と言われて、いくらぐらいのお弁当をイメージしますか? 3000円くらいという人もいるかもしれませんし、学生に聞けば800円でも高いと言うでしょう。

 このような認識のズレがあると、例えば上司が「大事なお客様だからちょっと高いお弁当を買って来て」と、新入社員に金額を言わないで買い物を頼んだ結果、買ってきてくれたお弁当を見てガッカリするというようなことが起こります。

今回のポイント

数字を使ってイメージを共有しよう


「ゲーム機」と言うより、「Nintendo」

 「きれいな景色を見た」と言うより、「駅のホームから富士山を見た」と言ったほうが相手に確実に伝わります。「きれい」は便利な言葉ですが、伝わる情報はほんの少しです。具体的に伝えることで、相手とより会話の中身を共有しやすくなります。

 具体的に言わないと伝わらない、ということは、私はMBA留学中に、就職活動のための履歴書の書き方についてレクチャーを受けたときにも感じました。履歴書には、自分の所属部署や肩書を書くだけでは不十分で、自分が「何を」「どうしたか」を具体的に、そして「動詞(Action Words)を使って書くように」と指導されました。

 例えば、「○○社コンサルタント」という肩書きに加えて、「○○業界の営業プロセス革新プロジェクトの報告書を私が中心になってまとめた」とか「○名のチームのリーダーとしてプログラム開発を納期内に完了させた」などと書きなさい、ということです。

 具体的に言うことの大切さは、英語で意思疎通するときにも日常的に感じました。私の個人的な印象も入りますが、アメリカの人は固有名詞が大好きです。

(出典:任天堂ホームページ)

 例えば、家庭用ゲーム機の一般名称は「Nintendo」で、辞書にも載っています。ただ、この変化の激しい業界で、いつまでそれが通じるかはは不明ですが……。「ビール(Beer)」と言うより、「バドワイザー(Budweiser)」と言ったほうが通じやすかったりします。「多国籍企業(Multinationals)」というより、「P&G」など会社名を挙げたほうが伝わりやすくなります。

 また、彼らが固有名詞を覚える能力の高さには驚きしました。ともかく、英語圏の人は機会があれば名前を呼び合い、いろいろな起源の名前があるのに、かなり正確に覚えます。固有名詞を大事に扱うことをしっかりしつけられているようにも感じました。

 固有名詞を適切に用いると、確実に伝わりやすくなります。「かわいいハンカチがほしい」と言うより、「キティちゃんのハンカチがほしい」と言うほうが、自分の希望を確実に伝えられるでしょう。

今回のポイント

動詞と固有名詞を用いて話そう


(次回は「聞く・聞き出す」について)

著者プロフィール:

金子敦子(かねこ・あつこ)

東京大学文学部卒業。英国インペリアル・カレッジ・ビジネススクール(MBA)修了。

アクセンチュア(コンサルタント・マネージャー)勤務、MBA留学を経て、UBS証券株式調査部(アナリスト・ディレクター)として業績予想および投資判断リポートの作成、国内外機関投資家へのプレゼンテーション業務を行う。

その後、武蔵野大学グローバル・コミュニケーション学部(専任講師)においてビジネス・コミュニケーションをはじめ、ビジネス英語、財務諸表分析・企業分析を担当。


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