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» 2014年07月29日 11時00分 UPDATE

やる気がわいてくるたった1つの方法:借りものでもかまわない――「ドン・キホーテの原理」

作家じゃあるまいし、ストーリーをつくるなんてムリだと思うかもしれない。それなら、仕事を意味付けるストーリーを部分的に借りてそれを組み立てればいい。たとえ借り物でも、ストーリーを持つことが大切なのだ。

[榎本博明,Business Media 誠]

連載「やる気がわいてくるたった1つの方法」について

『やる気がいつの間にかわいてくるたった1つの方法』

本連載は、心理学博士・榎本博明氏著、日本実業出版社刊『やる気がいつの間にかわいてくるたった1つの方法』から編集転載しています。

「日曜の夜は憂鬱(ゆううつ)になる」「自分に合った仕事に巡り会えればきっと仕事を楽しめるのに」――。そう考えている人たちに向け、「自分に向いている仕事さがし」ではなく自分の「仕事づくり」のコツとして仕事を意味づける“ストーリー”をキーワードに解説しています。

そのコツを習得すれば、転職することなく、今の仕事に対して自然にやる気がわいてきて、仕事を楽しめるようになるといいます。

どうせ働くのなら、楽しみながら働くコツを身につけてみるのはいかがですか。


 松下幸之助や安藤百福のような、人々や社会を豊かにするというストーリー。トップアスリートのように、きつくてつまらない練習の積み重ねの先にある勝利を信じるストーリー。

 「そんな壮大なストーリーは自分には描けない」という人は、身近な先輩たちのストーリーをお手本にしてもいい。自分の仕事に意味を感じてイキイキと働いている人たちの持つストーリーには普遍性がある。逆に言えば、普遍的なものを追求するストーリーだからこそ、納得してイキイキと仕事に取り組むことができるのだ。やる気を維持して働いている人たちのストーリーは、多くの人が共有できるのである。

 大切なのは、たとえ借り物であっても自分のストーリーを持つこと。それによって自分の仕事を意味付けることだ。

騎士でもないのに騎士のふりをして生きる

 ドン・キホーテをご存じだろうか。ディスカウントショップではない。スペインの作家セルバンテスの有名な小説だ。

 その小説の主人公は、ある物語を読んで、その登場人物に強く共感し、その人物に自分を重ね合わせるようにして、自分のアイデンティティを構築する。つまり、その人物になりきって行動するようになる。

 スペインのラ・マンチャに住むアロンソ・キハーノは、騎士道物語を読みふけっているうちに騎士道にとりつかれ、その登場人物をモデルに生きようと決意する。自ら「騎士ドン・キホーテ」と名乗り、騎士道にのっとってこの世の不正を正し、弱者を助ける冒険の旅に出る。憧れの騎士道物語のストーリーを借りてきて、自分のストーリーとしたわけである。

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 騎士でもないのに騎士のふりをして生きる。このようなドン・キホーテの生き方は、いかにも単純で滑稽なものとしてしばしば引き合いに出される。でも考えてみれば、どんな人間の生き方にも、借り物的なところがある。

 自分らしい生き方をしたいと思い、自分にフィットするストーリーを探す。そのときヒントとなるストーリーは、どこかで触れたことのあるストーリーのはずだ。

 「こんなふうに生きられたらいいな」と思った生き方。「自分も見習いたいな」と思った行動や考え方。「かっこいいな」と感じたこだわり。「あっ、それいいな」「それ、分かる」と思ったセリフ。

 そのオリジナルは、小さいころに絵本で読んだものかもしれないし、雑誌で読んだトップアスリートや人気アーティストの記事かもしれない。好きな作家のインタビュー記事かもしれないし、偉人の伝記かもしれない。テレビのトーク番組で接した著名人の語りかもしれないし、映画やドラマで見た架空の人物の生きざまかもしれない。親や恩師の先生など、身近に接した尊敬する人物の生きるストーリーかもしれないし、先輩や友人のもっていたストーリーかもしれない。

 私たちは、自分独自の人生を生きているつもりでありながら、じつは既存のストーリーを借りてきて、それにのっとって生きているのだ。共感を覚えたストーリーの断片が、いつの間にか心の中に取り込まれ、そのエッセンスをもとに自分のストーリーができあがっている。そのストーリーに沿って人生を生きている。

 ドン・キホーテの原理とは、ドン・キホーテのように物語を読んで感動し、その登場人物のように生きたいと思い、その生き方を取り入れることで自分のアイデンティティを構築し、それに基づいた行動をとることをいう。つまり、読んで感動した物語の登場人物の生きるストーリーを借りてきて、自分のストーリーとすることである。

 私たちもドン・キホーテのように、どこかで見たり読んだりした覚えのあるストーリーや身近に接しているストーリーの中から、とくに共感できるものを選び出し、それを自分のストーリーの軸にすることができる。

 借り物でもかまわない。自分の仕事を意味づけるストーリーをもつことが大切なのだ。

メンターからストーリーを借りよう。

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