「サーバント・リーダーシップ」という考え方明日を変える働き方(1/2 ページ)

リーダーシップというと、一般的には「周囲の人をぐいぐい力強く引っ張る親分肌の人」というイメージがあります。今回は、部下を“支配”ではなく“支援”する、「サーバント・リーダー」について紹介します。

» 2014年10月14日 11時00分 公開
[金井壽宏,Business Media 誠]

集中連載「明日を変える働き方」について

本連載は、金井壽宏著、書籍『「このままでいいのか」と迷う君の 明日を変える働き方』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。

 「この仕事は、自分に合っているのだろうか?」
 「今のような働き方が、いつまで続くんだろう……」

迷いながら働く人のために、キャリア研究の第一人者が、仕事の本質から会社との付き合い方、キャリアの捉え方まで、読者と一緒に考えていきます。

長い仕事人生にはアップダウンがつきもの。ワクワクしながら前向きに取り組める時期もあれば、失敗や思わぬ異動に落ち込む時期もあるのが当然です。

本書では、一般の企業で働く若手14名へのインタビューをもとに、仕事の「モティベーション」、そして「キャリア」の悩みから抜け出し、成長していくための考え方を紹介します。

 ・いったい自分は、何のために「働く」のか?
 ・「組織」とどこで折り合いをつけるか?
 ・これからの「キャリア」をどうデザインするか?
 ・もっと仕事に夢中になるためには?

など、キャリアの入口、あるいは途中で立ち尽くしている人が、自分なりの「働き方」をつかむための1冊です。


サーバント・リーダーシップという考え方

 前回紹介したキャビンアテンダント(以下、CA)のBさんは、職務上、リーダーになることを求められ、何とかその期待に応えようと努力しました。人はリーダーとして扱われることで、その役割を自覚するようになり、実際に名実ともにリーダーになっていく場合もよくあります。

 性格的にリーダー志向ではなく、目立つのが嫌いで、どちらかというと影でサポートしたりするほうが得意な人もたくさんいると思います。そういう若い人がリーダーシップを発揮して、組織を改革していくにはどうしたらよいでしょうか?

 リーダーシップというと、「周囲の人をぐいぐい力強く引っ張る親分肌の人」というイメージがあります。自ら組織をけん引し部下への指示命令を徹底して、厳しくいうことを聞かせるというのが、これまでの一般的なリーダー像だったと思います。

 しかしそういうリーダーシップには弊害もあります。上がガミガミうるさくいうことで、部下の自主性が阻害されて結果的にやる気を失わせてしまったり、自分から成長しようという気概をなくさせてしまうのです。その結果、組織の成長が滞ったり、社員の離職を招いたりということが少なくありません。

 これとは逆に、リーダーがメンバーに奉仕するという姿勢で臨むのが「サーバント・リーダーシップ」と呼ばれる考え方です。英語でサーバントには日本語の「召使」という意味より「奉仕者」に近いニュアンスもあります。

 メンバーに厳しいノルマを課して働かせるのではなく、リーダーがまず最初にメンバーに奉仕し、彼らの話をじっくり聞いて、その後に相手を導こうとするリーダーシップのことをいいます。一般的なイメージとして定着しているリーダーシップが「支配型」であるのに対し、サーバント・リーダーは、部下を「支配」ではなく「支援」します。

 落ち込んでいる人に対して、ただ「がんばれよ!」というのではなく、「落ち込んでいてもいいんだよ」といえる。同時に、部下がミッションに適合した行動をとりはじめたら、それを目立たぬように支援できるタイプの人が、サーバント・リーダーに向いています。

 この概念は、アメリカの通信会社、AT&Tに長らく勤務していたロバート・K・グリーンリーフが1977年に提唱しました。その後、ハーバード大学のジョセフ・L・バダラッコという先生が、書籍『静かなリーダーシップ』(翔泳社 2002年)を執筆し、自制、謙遜、忍耐という特徴を持った静かなリーダーシップを発揮するタイプの人について説明しています。

 従来のリーダーシップのイメージとはだいぶ異なりますが、大声を出してぐいぐい引っ張る人より、芯がしっかりしていて、部下からの信望もあついリーダーは現実にいるのです。リーダーシップの重要性が強調されるアメリカやヨーロッパの企業においても、決して猪突猛進型のリーダーだけが求められているわけではないのです。日本の企業では、株式会社資生堂の社長を務めた故・池田守男さんが、この考え方を取り入れて業務改革を行いました。

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