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» 2015年01月23日 08時00分 UPDATE

ナレッジワーキング:カリスマ社長引退、ジャパネットたかたの戦略を分析してみる(前編)

名物社長だった高田明さんが引退を表明し、息子の旭人さんが後を継ぎました。もしもあなたが後継社長だったとしたら、今後どのような事業戦略を打ち立てますか? フレームワークの使い方を学びます。

[永田豊志,Business Media 誠]

 ジャパネットたかたの名物社長、高田明さんが引退を表明しました。最高益を叩きだした後の勇退ということで、息子の旭人さんがカリスマ社長の後を継ぎました(ただし、明さんはテレビショッピング自体には出演を続けるようです)。

 ジャパネットたかたは、筆者の講演やワークショップでもしばしば取り上げる企業です。というのも、有名な割に、企業のポジショニングなどを誤って理解している人が多いためです。ワークショップに参加する多くの生徒さんが「家電を販売しているから、競合は量販店やネットショップ」といいます。そうではありません。それは、「3C分析」にかけてみれば明らかです。

競合はビックカメラやAmazonではない!

 3C分析は、事業戦略などを考えるときに、もっとも重要な要素である「顧客(Customer)」「自社(Company)」「競合(Competitor)」という3つの視点から分析しましょうという定番フレームワークです。このとき、同じ顧客を取り合うのが競合です。しかし、同じような製品を売っていても顧客が違えば競合とはいえません。

 ジャパネットたかたの顧客は、家電量販店を訪れたり、ネットで価格比較を行ったりするような人たちではありません。高田社長が声を裏返して「お孫さんの可愛い顔をこのデジカメで!」というように、ネットなんか使っていない地方に住むおじいちゃんやおばあちゃんのはずです。実際、筆者のワークショップで「ジャパネットで家電を買ったことがある」という人に会ったことは一度もありません。

 すると、「競合」は都心の量販店でもAmazonでもなく、実は街の電気屋さんということになります。

ジャパネットたかたの3C分析図例 ジャパネットたかたの3C分析図例

SWOT分析のための下準備――価値曲線とPEST分析

 もしもあなたが跡継ぎ社長だったとしたら、今後どのような戦略を打ち立てますか? 今回と次回の記事では「SWOT分析」を使ってアイデアを出してみたいと思います。これは「自社の強み(Strength)と弱み(Weakness)」「市場の機会(Opportunity)と脅威(Threatens)」という2軸の視点からアイデアを導き出すものです。

 ここでいう強みと弱みに、思いついたものから入れていってはダメです。きちんと「競合と比較した場合に傑出した点」が強みであり、「顧客のニーズがあるのにもかかわらず、大きく引けをとる点」が弱みとなります。これを明確にするには「価値曲線」という別のフレームワークが便利です。

 また、機会と脅威についても、政治的背景、経済的背景、社会的背景、技術的背景など網羅的に市場へ与える影響のあるトピックをおさえる必要があります。これをモレなくやるのには「PEST分析」という別のフレームワークが便利です。

 この関係を図にまとめると以下のような関係になります。まずは、価値曲線とPEST分析というSWOT分析を行う前の下ごしらえに着手します。

ジャパネットたかたのSWOT分析 ジャパネットたかたのSWOT分析の準備

街の電気屋さんと「価値」を比較してみる

 さっそく、競合である街の電気屋さんと比べて、ジャパネットたかたの持つ価値を明らかにしましょう。価値レベルを比較する価値曲線は、どの部分が競合と差別化ができているのかを可視化する上で便利な分析ツールです。

 まずは、X軸に顧客である地方のおばあちゃんを思い浮かべながら、家電購入時の決め手をいくつかピックアップします。ここでは価格、機能、アフターサービス、品揃え、配送スピード、商品説明、信頼性などをピックアップしました。

 次に、Y軸には各項目ごとに提供価値のレベルをプロットしていきます。例えば、ジャパネットたかたは通販ですから、アフターサービスも電話やメールといったコミュニケーション手段に限られています。一方で、街の電気屋さんはお客さんの家を訪れて設定したり、相談に乗ったりすることができます。安心ですね。

 感覚的ではありますが、ジャパネットたかたのアフターサービスのレベルを「2」、街の電気屋さんのそれを「5」とします。ほかの項目についても、同様にスコアをつけていき、各々の線を結んで2つの線を比べてみましょう。

 一方が他方に対して大きくプラスの差をつけている項目が「差別化」できている点、いわば強みであると一目瞭然です。逆にへこんでいる点が弱みです。ジャパネットたかたは、価格や商品説明などが「強み」、品揃えやアフターサービスは「弱み」という傾向があると考えられます。

ジャパネットたかたの価値曲線 ジャパネットたかたの価値曲線

 次回は、PEST分析を使って、地方在住のIT苦手だけど家電を買いたいおばあちゃん市場をとりまく、フォローウィンド(機会)とアゲンストウインド(脅威)をまとめて、最終的にSWOT分析を行います。

参考文献:「ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門」(日経BP社)

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

Twitterアカウント:@nagatameister


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