マーケティング・シンカ論

岡山のスーパーが、膨大なデータを分析するワケ水曜インタビュー劇場(情報公演)(3/6 ページ)

» 2018年11月07日 08時07分 公開
[土肥義則ITmedia]

売り上げが20%ほど伸びた

中山: データが多いからなんですよね。ご存じの通り、スーパーはたくさんの商品を扱っています。当社の場合で言えば、標準店舗の売場面積は350坪で、1万2000アイテムほど販売している。大型店舗の広さは500坪で、アイテム数は2万5000ほどになる。たくさんある商品の中からどこにメスを入れたらいいのか。その判断が難しい。

土肥: ツールを導入する前、店長は情報をどのように分析していたのでしょうか?

中山: 正直に言って、他社に比べてかなり劣っていました。これまでにもさまざまなデータを見せて、本部から「活用してくださいね」と伝えても、実際に使っているのは3分の1ほど。データ活用に関心がある店長は使っていましたが、そうでない店長は「これまでの経験と勘で」といった感じで、数字を活用することはほとんどありませんでした。

昨月対比で年齢別の利用状況を知ることができる

土肥: 以前は数字を活用する人が少なかったのに、なぜいまは違うのですか?

中山: リアルタイムでデータを見ることができるので分かりやすいといった点もあるかと思いますが、やはり結果が出ているからではないでしょうか。

 話はちょっと変わりますが、店頭で並んでいる「肉」はどのような流れで手配しているのか。以前であれば、店に担当者がいて、「豚肉が売れているな」と判断すれば、その担当者が近隣の大型店に豚肉を発注していたんですよね。「10パック追加」といった感じで。連絡を受けた大型店では、その店でどのくらいのお客さんがいて、どのくらい売れているのか、といった状況がよく分かりません。データが全くないので、店舗から発注があれば「了解しました」と言って、そのまま発送するといった流れでした。

 でも、いまは違う。プロセスセンターを設置して、そこから肉を配送しているんですよね。センターにもツールを導入して、データを見て判断できるようにしました。「A店では豚肉が売れている。10パック追加しなければいけない」といった具体に。ただ数字だけだとお客さんの流れが分からないので、店内にカメラを設置して、センターで店の雰囲気が分かるようにしました。

プロセルセンターで店内の客の流れなどを見ることができる

土肥: 現在、店に担当者がいないわけですよね。となると、店からの発注はないのですか?

中山: いえ、そういうわけではありません。店からの発注もあるのですが、連絡がなければ、センター側が判断して発送することも。とある店は、データを分析したところ「豚肉」をチャンスロスしていることが分かってきました。もっと売れているはずなのに、品薄などで売り上げを伸ばすことができていなかったんですよね。

 当社はロス管理が厳しくて、他社と比べてチャンスロスが多い傾向がある。店長や担当者は「この時間帯になれば豚肉が売れると思うけれど、ロスが出たら嫌だな」と判断して、消極的になっていた部分があったのかもしれません。ただ、夕方以降に豚肉が不足気味になっていることが分かってきたので、発注することに。結果、対前年比で売り上げを20%伸ばすことができました。

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