クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

象が踏んでも壊れないトヨタの決算池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)

» 2020年05月18日 07時10分 公開
[池田直渡ITmedia]
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21年度見通し

 まずは販売面は、前期895万8000台あった販売台数は、21.9%下落して700万台の見通しだ。さすがに地域毎の比率は不明ということだが、普通に考えて北米マーケットの回復がどうなるかが重要なポイントになる。

連結販売台数の見通し(トヨタ決算資料より)

 さてその他の財務指標については、営業収益24兆円(本年度実績値29兆9299億円)、営業利益5000億円(本年度実績値2兆4428億円)、営業利益率2.1%(本年度実績値8.2%)との見通し。これだけの大波乱の中で、営業利益のプラスが維持できるという大変頼もしいものだ。

 豊田章男社長は決算発表後の質疑応答で、コロナショックに対してのトヨタの現状をこう説明した。

 リーマンショックより遥(はる)かにインパクトが大きい今回のコロナショックの中で、前回(リーマンショック)と異なり、今回は何とか黒字の見通しを立てることができた。という点で、コロナ収束後の経済復興の牽引(けんいん)役を果たしていく準備が整ったという手応えを感じています。

 また、執行役員の小林耕士氏は同じく質疑応答で、トヨタの今後のプライオリティについて以下のように説明した。

 前回のリーマンショック時の大きな反省点は、全てを止めてしまったことなんです。会社というのはGoing Concern(持続的成長)なんです。そういう意味では止めてはいけないものは、やっぱり未来に対する開発費であり投資であり、それが普遍的にできるだけの手持ち現金を持たなくてはなりません。企業が持続的成長をする中で、世の中がもっと豊かになるのではないのかと思っております。ですからこういう状況であっても必要な投資はいささかも変えることはございません。もちろん精査をして削るべきところは削ります。

 未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて力強い。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。少なくとも筆者が見る限り、トヨタ自身は、象が踏んでも壊れない強靭な体質を手に入れたのだと思う。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答を行っている。


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