クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

GRヤリス 一番速いヤツと一番遅いヤツ池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2020年11月23日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 年明け早々にティーザーキャンペーンが開始になって、せっかく「欲しいな」と思っても、半年以上続報無し。7月になってようやくサーキット試乗記が出る時点では、発売記念限定のファーストエディションはすでに完売済みで、レギュラーモデルは仕様はおろか価格すら分からない。

 あるいは購入希望者が、公道でのインプレッションを待って、日常の使い勝手を知りたくても、肝心の試乗会は9月4日の発売に遅れること2カ月以上。「メディアの記事なんて信じない」という人も増えている昨今のご時世に鑑みても、ディーラー試乗車の配備は実質ゼロで、自分で直接情報を収集することができない。

 どうしてもというならば、MEGA WEBまで行けば展示車両に触れるし、「ライドワン」で300円払えば、RZ“High performance”グレードのみ試乗することはできるが、これはこれで予約枠が争奪戦。当日予約しかできないので、乗りたい人は午前0時にwebページの予約ボタンの早押し競争をする状態だ。なおかつクルマがラリーウェポンと来ている。ライドワンの狭く短いコースでは、とてもではないがパフォーマンスの一部ですらチェックできないと思う。

 要するに年明け早々にティーザーキャンペーンを張って、欲しい気持ちを盛り上げておきながら、以来延々、ユーザーは商品を確認する方法がない。400万円も500万円もするハイパフォーマンスカーを実車を見ずに、直感で買えという構造になっている。もちろんトヨタがそれをわざとやっているとは思わないが、わざとだろうがしょうがなくだろうが客にとっては同じこと。コロナ騒動でいろいろ予定通り進まないところはあったにせよ、お客のためにベストを尽くしたのかと問いたい。

 クルマの出来は褒め足りないくらいに良いのに、この販売と広報のやり方はないと思う。おそらく聞けば事情があるのだろうが、結果だけ見れば「天狗(てんぐ)の鼻がだいぶ伸びている」ようにしか見えない。お客さま第一ではなかったのか? こんな時代にWRC生まれのクルマに期待してくれる大事なファンへの向き合い方は、もう少し考えた方がいい。トヨタがそんなことでどうするのだ。

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