クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

GRヤリス 一番速いヤツと一番遅いヤツ池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/6 ページ)

» 2020年11月23日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

グレードごとの違い

 さて、気を取り直してクルマの話だ。といってもすでにご存知の方も多いだろうが、GRヤリスは3グレード構成で、「RZ“High performance”」「RZ」「RS」となっている。大きな違いはRZ“High performance”にはトルセン式のLSDが入っていて、「RZ」にはそれがない。「RS」は1.5のNAユニットにCVTを組み合わせたモデルだ。3グレードともGRファクトリーで高精度組み立てが行われ、世にも贅沢な準手組みの高精度シャシーが用いられるのは共通だ。

GRヤリスのグレード見分けのポイントはタイヤとホイール。BBSの鍛造にミシュランの225/40ZR18を履くのがRZ“High performance”。エンケイの鋳造アルミにダンロップの225/40ZR18を履くのがRZ。RSはRZと同じだが室内を見ればシフトノブがCVT

 多分GRヤリスが欲しいという大抵の人には、RZ“High performance”がお勧めということになるだろう。こういうクルマは、買ってから後悔するくらいなら全部載せが無難だ。一番良いのを持っているヤツに出くわして嫌な気分になりたくないならそうすればいい。せこいハナシをすればリセールも多分高い。

 ただし、極めて余計な老婆心を発揮して言えば、マニアックな人にはRZの方が良いところもある。LSD付きのAWD車のクセや動きを熟知している手練れを別にして、かつ、勝ち負けの世界で限界までのトラクションを求めないなら、LSDは無い方がクルマの動きが特にターンインで素直だ。サーキットで走ってもそれで十分以上に限界は高い。

 タイムをコンマ単位で削ることが目的ならトラクションの抜けは防ぎたいけれど「うわっ! 速い、楽しい」というあたりでサーキットで遊ぶだけなら、LSDはむしろ邪魔かもしれない。なのでたまにミニサーキットで遊ぶくらいならむしろRZの方が扱い易いと思う。

 いずれにしても上の2グレードは本質的にラリーウェポン系で、公道で常識的なスポーツドライビングをするにはどちらもオーバークオリティ。どちらかといえば、そのオーバークオリティのクルマを所有することを楽しむクルマだと思う。ポリコレかまびすしい昨今、これを公道でぶっ飛ばすのは、ドラレコ映像をさらされる覚悟がいるだろう。

AWDモデルの2台にはリアにGR-FOURのエンブレムが付く

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