さて、気を取り直してクルマの話だ。といってもすでにご存知の方も多いだろうが、GRヤリスは3グレード構成で、「RZ“High performance”」「RZ」「RS」となっている。大きな違いはRZ“High performance”にはトルセン式のLSDが入っていて、「RZ」にはそれがない。「RS」は1.5のNAユニットにCVTを組み合わせたモデルだ。3グレードともGRファクトリーで高精度組み立てが行われ、世にも贅沢な準手組みの高精度シャシーが用いられるのは共通だ。
GRヤリスのグレード見分けのポイントはタイヤとホイール。BBSの鍛造にミシュランの225/40ZR18を履くのがRZ“High performance”。エンケイの鋳造アルミにダンロップの225/40ZR18を履くのがRZ。RSはRZと同じだが室内を見ればシフトノブがCVT
多分GRヤリスが欲しいという大抵の人には、RZ“High performance”がお勧めということになるだろう。こういうクルマは、買ってから後悔するくらいなら全部載せが無難だ。一番良いのを持っているヤツに出くわして嫌な気分になりたくないならそうすればいい。せこいハナシをすればリセールも多分高い。
ただし、極めて余計な老婆心を発揮して言えば、マニアックな人にはRZの方が良いところもある。LSD付きのAWD車のクセや動きを熟知している手練れを別にして、かつ、勝ち負けの世界で限界までのトラクションを求めないなら、LSDは無い方がクルマの動きが特にターンインで素直だ。サーキットで走ってもそれで十分以上に限界は高い。
タイムをコンマ単位で削ることが目的ならトラクションの抜けは防ぎたいけれど「うわっ! 速い、楽しい」というあたりでサーキットで遊ぶだけなら、LSDはむしろ邪魔かもしれない。なのでたまにミニサーキットで遊ぶくらいならむしろRZの方が扱い易いと思う。
いずれにしても上の2グレードは本質的にラリーウェポン系で、公道で常識的なスポーツドライビングをするにはどちらもオーバークオリティ。どちらかといえば、そのオーバークオリティのクルマを所有することを楽しむクルマだと思う。ポリコレかまびすしい昨今、これを公道でぶっ飛ばすのは、ドラレコ映像をさらされる覚悟がいるだろう。
AWDモデルの2台にはリアにGR-FOURのエンブレムが付く
- ヤリスのトレードオフから考える、コンパクトカーのパッケージ論
ヤリスは高評価だが、満点ではない。悪いところはいろいろとあるが、それはパッケージの中でのトレードオフ、つまり何を重視してスペースを配分するかの結果だ。ヒューマンインタフェースから、なぜAピラーが倒れているかまで、コンパクトカーのパッケージに付いて回るトレードオフを、ヤリスを例に考えてみよう。
- ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(後編)
今回のGRヤリスでも、トヨタはまた面白いことを言い出した。従来の競技車両は、市販車がまず初めにあり、それをレース用に改造して作られてきた。しかし今回のヤリスの開発は、始めにラリーで勝つためにどうするかを設定し、そこから市販車の開発が進められていったというのだ。
- GRヤリスで「モータースポーツからクルマを開発する」ためにトヨタが取った手法
トヨタは「モータースポーツからクルマを開発する」というコンセプトを実現するために、製造方法を変えた。ラインを流しながら組み立てることを放棄したのである。従来のワンオフ・ハンドメイドの側から見れば高効率化であり、大量生産の側から見れば、従来の制約を超えた生産精度の劇的な向上である。これによって、トヨタは量産品のひとつ上にプレタポルテ的セミオーダーの商品群を設定できることになる。
- ヤリスの何がどう良いのか?
ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。しかし、ヤリスのすごさは燃費ではなく、ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せることにある。
- トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス
ついこの間、ハリアーを1カ月で4万5000台も売り、RAV4も好調。PHVモデルに至っては受注中止になるほどのトヨタが、またもやSUVの売れ筋をぶっ放して来た。
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