などと書くと、「おいおい、それじゃRZ系が公道では楽しくないみたいじゃないか?」とおしかりを受けそうなので、そこは絶妙なチューニングで文章を書かないといけない。しつこく書くが、RZ系もちゃんと楽しい。ただ基本特性として舵角依存が高いタイプなので、法定速度内で旋回半径をスロットルで変えたいみたいな人にはRSの方がより楽しいと言っているだけだ。余談だが、GRの目指すハンドリングは、過去のクルマを見る限り割と路面貼りつき系だ。ハンドルで曲げるタイプである。
乗り心地はRZ系ですら割と良い。というかパフォーマンス比でいえば極上の部類に入る。ただし絶対値は別で、クルマに理解のない奥方が黙って乗ってくれるかは少し微妙だ。少なくとも褒めてはくれなそうである。対してRSはロードカーとして言い訳が要らない乗り心地。むしろ普通のヤリスより良い。
WRCポテンシャルの高剛性3ドアボディと準手組み生産の高精度組み付けが、乗り心地にも明らかに効いている。「こんなものが264万円で売ってますよー!」と鐘や太鼓で触れて回りたいくらいのバーゲンである。
アルミなどを使った専用シャシーと高精度組み立ての車両が、わずか264万円で手に入る
1.5リッターNAのユニットは88kW/120PSしかないから、動力性能は普通。CVTなので、高速の合流などで全開にすると、回転と加速が比例しないところは確かにある。けれども、日常域でうんざりするほどズルズルのCVTではないし、日々日常的に付き合うクルマとしてバランスが良いのだ。まあ「6MTがあればなぁ」という人の気持ちは分かるが、それをいったら「5ドアがあればなぁ」という話になってキリがなくなる。
スポーツ派には残念ながら、RSのトランスミッションはCVTのみ。ただしフィールは悪くない
- ヤリスのトレードオフから考える、コンパクトカーのパッケージ論
ヤリスは高評価だが、満点ではない。悪いところはいろいろとあるが、それはパッケージの中でのトレードオフ、つまり何を重視してスペースを配分するかの結果だ。ヒューマンインタフェースから、なぜAピラーが倒れているかまで、コンパクトカーのパッケージに付いて回るトレードオフを、ヤリスを例に考えてみよう。
- ヤリスGR-FOURとスポーツドライビングの未来(後編)
今回のGRヤリスでも、トヨタはまた面白いことを言い出した。従来の競技車両は、市販車がまず初めにあり、それをレース用に改造して作られてきた。しかし今回のヤリスの開発は、始めにラリーで勝つためにどうするかを設定し、そこから市販車の開発が進められていったというのだ。
- GRヤリスで「モータースポーツからクルマを開発する」ためにトヨタが取った手法
トヨタは「モータースポーツからクルマを開発する」というコンセプトを実現するために、製造方法を変えた。ラインを流しながら組み立てることを放棄したのである。従来のワンオフ・ハンドメイドの側から見れば高効率化であり、大量生産の側から見れば、従来の制約を超えた生産精度の劇的な向上である。これによって、トヨタは量産品のひとつ上にプレタポルテ的セミオーダーの商品群を設定できることになる。
- ヤリスの何がどう良いのか?
ヤリスの試乗をしてきた。1.5リッターのガソリンモデルに約300キロ、ハイブリッド(HV)に約520キロ。ちなみに両車の燃費は、それぞれ19.1キロと33.2キロだ。特にHVは、よっぽど非常識な運転をしない限り、25キロを下回ることは難しい感じ。しかし、ヤリスのすごさは燃費ではなく、ドライバーが意図した通りの挙動が引き出せることにある。
- トヨタの大人気ない新兵器 ヤリスクロス
ついこの間、ハリアーを1カ月で4万5000台も売り、RAV4も好調。PHVモデルに至っては受注中止になるほどのトヨタが、またもやSUVの売れ筋をぶっ放して来た。
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