クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

GRヤリス 一番速いヤツと一番遅いヤツ池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)

» 2020年11月23日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 などと書くと、「おいおい、それじゃRZ系が公道では楽しくないみたいじゃないか?」とおしかりを受けそうなので、そこは絶妙なチューニングで文章を書かないといけない。しつこく書くが、RZ系もちゃんと楽しい。ただ基本特性として舵角依存が高いタイプなので、法定速度内で旋回半径をスロットルで変えたいみたいな人にはRSの方がより楽しいと言っているだけだ。余談だが、GRの目指すハンドリングは、過去のクルマを見る限り割と路面貼りつき系だ。ハンドルで曲げるタイプである。

 乗り心地はRZ系ですら割と良い。というかパフォーマンス比でいえば極上の部類に入る。ただし絶対値は別で、クルマに理解のない奥方が黙って乗ってくれるかは少し微妙だ。少なくとも褒めてはくれなそうである。対してRSはロードカーとして言い訳が要らない乗り心地。むしろ普通のヤリスより良い。

 WRCポテンシャルの高剛性3ドアボディと準手組み生産の高精度組み付けが、乗り心地にも明らかに効いている。「こんなものが264万円で売ってますよー!」と鐘や太鼓で触れて回りたいくらいのバーゲンである。

アルミなどを使った専用シャシーと高精度組み立ての車両が、わずか264万円で手に入る

 1.5リッターNAのユニットは88kW/120PSしかないから、動力性能は普通。CVTなので、高速の合流などで全開にすると、回転と加速が比例しないところは確かにある。けれども、日常域でうんざりするほどズルズルのCVTではないし、日々日常的に付き合うクルマとしてバランスが良いのだ。まあ「6MTがあればなぁ」という人の気持ちは分かるが、それをいったら「5ドアがあればなぁ」という話になってキリがなくなる。

スポーツ派には残念ながら、RSのトランスミッションはCVTのみ。ただしフィールは悪くない

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