クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

GRヤリス 一番速いヤツと一番遅いヤツ池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)

» 2020年11月23日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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ヤリス一族の評価

 いろいろな意味でヤリス一族はとても面白い。たぶんそれは、トヨタがリーマンショック以来脈々と続けてきた努力の賜物だと思う。1.5NAの素のヤリスですら、筆者のロングドライブテストでリッター19キロ走り、日本のベーシックカーのボトムラインを大幅に底上げしてみせてくれた。

 ハイブリッドはリッター33キロを記録して見せ、少なくとも2020年代前半のエンジン搭載車として、最優秀といえるCAFE適応を示した。かつ優れたドライバビリティを見せてくれた。筆者は昔からの友人に勧めたし、買った当人も満足している。

 ヤリスクロス・ハイブリッドも1週間ほど乗ったが、これがまたどんな狭いところにでも自信を持って入って行けるし、運転していて疲れない。Bセグのコンパクトカーでありながら、なんなら高速道路での300キロ程度の移動も苦にならない。それはクルマの基本に加えて、最新のADASの出来が良いからだ。燃費こそリッター23キロと、ヤリス・ハイブリッドで上がりすぎたハードルを基準に見ると期待外れだったが、冷静に考えれば、実燃費23キロで燃費が悪いなどといったらトヨタ以外のクルマはどうなるのだという数字である。

 そこへWRC生まれのGR3兄弟が加わるとなれば、これは日本のBセグメントにとって、もう恐るべきベースラインの向上と言えるだろう。

 もっといいクルマ。それは今のトヨタにとって、とても大事な言葉だが、日本のBセグメントにその適用が進んだことはこの国に暮らす人々にとっても大きな救いになると思う。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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