具体的には、上記の考え方で算出した所得が3万9375ドルまでであれば、金融所得税はゼロとなり州・地方政府税のみの負担で済むのだ。3万9376ドルから43万4550ドルまでが15%、43万4551ドルからが20%となる。
英国も米国と同様に、給与所得等と金融所得のグループから算出する段階課税制を採用しており、その税率は10%と20%の二段階となっている。年間1万1700ポンドの非課税枠があり、3万4500ポンドまでが10%、それ以上の金融所得税が20%となる。
一方で、フランスとドイツは異なるアプローチを採る。フランスの場合は所得税12.8%に社会保障関連税17.2%の30%。ドイツの場合は所得税25%に付加税1.375%が付いて26.375%となっている。ただし、両者は金融所得について、分離課税か総合課税かを選択できる。そのため、合計の所得水準が低く、総合課税に切り替えた方が税率の点で得な場合は、累進課税方式である30%総合課税に切り替えられる。
つまり、米国・英国では所得が低い場合は金融所得税も低くなる点で、一律課税の日本よりも格差是正に適合的な制度となっている。フランス・ドイツでは確かに名目の税率は日本よりも高いが、金融所得が低い場合は総合課税に切り替えることで、実質的に段階課税と同じ処理ができているといえる。
一方で日本は、段階課税でもなければ総合課税に切り替えることもできない。したがって、金融所得が小さいものほど負担が大きいという逆進性が強い設計となっているのだ。
給与との比較で考えよう。給与で100万円稼いだ場合、所得税はゼロだ。一方で資産運用によって100万円稼ぐと約20%課税されるため、所得が低いうちは資産運用が税金的には不利になる。
一方で給与が1800万円を超える場合、この部分は住民税と合わせて50%が課税されるが、資産運用であれば約20%の課税で済む。所得が高くなるほど、資産運用が有利になるという制度設計になっているのだ。
したがって、一律で増税すると資産運用が不利になる一般人が増加し、貯蓄から投資への移行がスローダウンする可能性が高いばかりか、高所得者は依然として資産運用が税金的に有利な状態が続くため、格差をむしろ助長すると考えられる。
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