なぜクルマのボディはスチール製なのか 軽量化に向けて樹脂化が進まない理由:高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)
かつてホンダが作り上げた初代NSXはオールアルミモノコックという、まるで航空機のような構造を誇った。これは強固であるだけでなく腐食にも強く、未だにリフレッシュプランにより足回りやマウント類を交換してリビルトすると、本来の乗り味がよみがえるといわれている。けれどもこれはバブル期ならではのクルマだ。量産性が低過ぎて、とても一般的なクルマには向かない。
量産性は乗用車を生産するにあたって、重要な要素だ。しかし欧州メーカーなどでは他ブランドとの差別化を図るためにも、軽量化や高剛性化のために高価なマテリアルを採用する傾向が強まっている。
スポーツセダンを主体としてきたBMWは、ボディにアルミ合金を積極的に使用してきたメーカーだ。高性能な限定車やEVを別としても、アッパーミドル以上のセダンにはアルミ合金を多用しており、アウタースキンだけでなく、ストラットタワーにアルミ合金のダイキャストを用いるなど、構造材にも鉄以外の素材を採用している。
独創性を重んじるアウディは一時期オールアルミにこだわったブランドだが、最近はスチール合金の長所を取り入れ、さらにCFRPも構造材に取り入れるなど、ますます複雑化しつつある。
そうなってくると、異素材との接合という問題が起こってくる。もちろんそれを解決しているからこそ、前述の自動車メーカーたちは異素材を採用しているのだが。
アウディのシャーシは、アルミ合金と鋼板の接合に特殊なリベットと接着剤を用いている。ここまで複雑な構造を取り入れられるのは高級車だからだが、日本の自動車メーカーはコストもあって高級車でも大衆車と生産方法を変えることを好まない傾向にある(筆者撮影)
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