まるで「就活版ネトフリ」? Z世代の価値観にマッチした「動画就活」が注目されるワケ新卒採用は時代で変化(2/3 ページ)

» 2022年03月08日 10時00分 公開
[酒井麻里子ITmedia]

企業と学生の双方が動画で自己紹介

photo 大手からベンチャーまで、幅広い規模や業種の企業の動画が並んでいる

 「JOBTV」は、このような就活市場の変化を受けてスタートした、企業と学生の双方が動画を出してマッチングを行う双方向型のプラットフォームだ。

 学生側の画面には企業の紹介動画がカテゴリー別にずらりと並び、まるで動画コンテンツ配信サイトの「Netflix」を想起させるデザインが印象的だ。在原氏は「実際、学生にとっての使い勝手を考えて、インターフェイスはかなり参考にしています」と笑う。学生はそこから映画やドラマを選ぶような感覚で、気になる企業の動画を選んで閲覧できる。さらに、企業によっては詳細ページからそのままエントリーすることも可能だという。

 一方で、企業側の画面には学生の動画が並び、企業はそれらを自由に閲覧可能。企業から学生にスカウトを送る機能も備えている。企業の求人に対して学生がエントリーする方法と、企業側が学生の動画を見てスカウトを行う方法の2通りの採用を行えることが特徴で、いわゆる動画面接ではなく、エントリーシートの代わりとして動画を使う位置づけのものとなる。まさに前述した、米国における「動画履歴書」や「TikTok就活」に近いスタイルだ。

ミスマッチを軽減し、採用工数の削減にも寄与

 企業側にとって、学生の情報を動画で知ることができるのは大きなメリットだという。文字ベースの従来のエントリーシートだけでは把握しきれなかった情報を得ることができ、それがミスマッチ防止にも役立つというのがその理由だ。

 「動画であれば、わずかな時間でもその学生の雰囲気が伝わり、自社のカルチャーに合うかどうかも『紙と文字』よりは見えやすくなります。実際に会った瞬間に、お互いに『ちょっと違うな』と思うような不毛な面接を減らせるので、結果的に採用工数の削減につなげることもできるはずです」(在原氏)

photo 動画内でのPR方法はさまざま。ただカメラに向かって話すだけではなく、小道具を使って趣味や得意なことをアピールする学生もおり、人となりが伝わりやすい

 また、学生からは「動画でしっかり自己PRした結果なら、落ちても納得できる」という反響もあるという。エントリーシートだけで落とされると、自分の伝えたいことが本当に伝わっていなかったという「不完全燃焼」の感覚が残るのに対して、動画で自分の思いを届けた上でダメだったのであれば仕方ないと思える。一昔前なら考えられない手法かもしれないが、採用する側、エントリーする側の双方が納得できる手段として動画が機能していることは間違いないようだ。

フォーマット化で制作のハードルを下げる

 とはいえ企業によっては、自社の紹介動画を作ることがハードルとなるケースもあるだろう。そこでポイントとなるのが「フォーマット化」だという。

 「JOBTVでは会員企業を対象にした動画制作支援を行っていますが、その際には、資料を画面に表示しながら担当者が説明する統一した構成を使っています。普段の会社説明会などで使用しているスライドをそのまま使うことができ、担当者にとっても日ごろから話している内容なので、ハードルを大きく下げることができます」(在原氏)

photo 既存の会社説明スライドを利用するので、企業側の制作ハードルが低い

 さらに、資料を全て説明するフルバージョンのほかに、内容を間引いて5分間にまとめたショートバージョンの動画も作成。これはZ世代の動画の使い方に大きく関係している。

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