なぜ「侮辱症状」を手渡したのか ハシモトホームとスルガ銀行の妙な関係スピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2022年06月28日 09時39分 公開
[窪田順生ITmedia]

独特の社内カルチャー

 「いやいや、そんな深刻なものじゃなくて、ただの身内ノリじゃないスか」と言わんばかりなのだ。世間一般の常識とかけ離れた独特の社内カルチャーにドン引きしている人も多いだろうが、この「人権感覚のマヒ」こそが、営業職男性を死に追いやった「真犯人」である可能性が高い。

 「がんばれ」と「みんなで一致団結」を組織カルチャーのど真ん中に据える日本型組織は、「結果」が出なくなってくると、現場の人間に対して「お前らががんばっていないからだ」とか「一致団結の輪を乱すな」などと責任転嫁をして、現場の人権を侵害する傾向が強い。

(出典:ハシモトホーム)

 分かりやすいのは、スルガ銀行だ。かつて「地銀の優等生」と呼ばれた同行だが、実は近年「結果」が出なくなっていた。第三者委員会の調査報告書(P163)によれば、全社営業目標の達成率は2011年度は114.8%だったが、13年度には83.1%、16年度は48.8%まで低下して、17年度にはついに25.3%にまで落ち込んでいた。そうなると、そのツケはすべて現場に押し付けられて常軌を逸した精神論と、悪質なパワハラが横行する。

 同じ報告書によれば、ある営業マンは、営業目標が達成できなかったとき、上司からものを投げられ、パソコンを殴られ、こう脅された。

 「お前の家族皆殺しにしてやる」

 また、ある営業マンは契約が取れないと「なぜできないんだ、案件を取れるまで帰ってくるな」と、上司に首をつかまれ壁に押し当てられた。さらに、顔の横の壁も殴られたという。このように「結果」が出なくなればなるほど、「現場の人権侵害」が深刻になっていったのである。

 これはあくまで筆者の想像だが、ハシモトホームも同じ問題が起きていた可能性が高い。実は同社も、スルガ銀行と同じでかつては「地方のハウスビルダーの優等生」とうたわれていた。

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