このような「結果」を知ると「よかった、よかった。オレはドーナツが好きだから、たまに買うんだよねえ」と思われたかもしれないが、筆者は気になっていることが2つある。先ほど紹介した不振に陥った原因である。
1つめの理由「健康志向」については、いまでも続いている。ここ数年でいえば、オートミールやタンパク質にフォーカスした商品が盛り上がっている。この5年で“不健康志向”が広がった、なんて話は聞いたことがない。というわけで、本当に「健康志向」が原因で、クリスピーの売り上げが落ちたのか疑問である。
2つめの理由「コンビニドーナツ」も、ビミョーである。確かに、当時のコンビニはレジ横の一等地でドーナツを販売していたこともあって、「ちょっと買ってみるか」といった客も多かったはず。売り上げが伸びていたこともあって、「ドーナツ界の王者、ミスタードーナツも食われてしまうのでは?」といった声がでていたほど。
しかし、ご存じのとおり、その後は減速。となると、ゲーム「リバーシ」の黒が白にひっくり返るように、コンビニからクリスピーにひっくり返ってもおかしくはないが、そんな話も聞いたことがない。同社に確認したところ「利用シーンが違うので、(昔も今も)当社への影響はないように感じている」とのこと。
では、どういった理由で既存店の売り上げが伸びたのだろうか。取材したところ、2つの理由が浮かんできた。
1つめは「店舗運営力」である。上陸当時、連日のように行列ができていたこともあって、現場でちょっとした混乱が起きていた。働く人たちは中途採用ばかりで、店の運営は彼ら・彼女らの“過去の経験”に頼る部分が多かった。また、新しい店ができると、そこに優秀な社員を異動させて売り上げを確保していた。そうなると、その人がいた店がダメージを負うことになる。
経営資源が分散されたことによって、既存店の売り上げが減少していったのだ。社長の若月貴子さんは14年に副社長に就任し、マーケティング部門を統括することに(社長には17年に就任)。売り上げが減少しているだけでなく、現場が“混乱”していることも受けて、16年の大量閉店を主導したのだ。
商品をきちんと説明できているのか、お客をきちんと接客できているのか、店内でゆっくりとくつろいでいただけているのか――。どの店に行っても、心地よく感じられるサービスを受けられるように、改善を試みる。
毎年のように「顧客満足度」を調査しているわけだが、結果はでているのだろうか。2016年の数字に比べて、22年(4〜7月)は19%も伸びているようで。いくつかの項目がある中で「担当者の親しみやすさ」と「スピード」が目立っていた。また、以前と比べて店舗間の差がほとんどなくなったという。
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