マーケティング・シンカ論

「大量閉店」に追い込まれたのに、なぜクリスピーは“復活”したのか週末に「へえ」な話(4/4 ページ)

» 2022年10月02日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]
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流行をつくるのではなく

 冒頭で、クリスピーが店舗数を絞り込んだ話をしたが、現在は都市部を中心に59店舗を構えている(9月現在)。今後の予定を聞いたところ「この1年間に、2ケタ出店を目指す」(若月さん)そうだが、そうなると気になるのはどこまで増やすかである。

 メディアの人間からすると、「2年以内に100店舗にする!」「ミスドの背中が見えてくるまで、店を増やす!」といったコメントを期待するわけだが、そこは冷静。「店舗数を増やす=成長」とはとらえていなくて、こだわっているのはお客から「長く愛されること」のようである。

 「長く愛される」ために、どんなことにチカラを入れていくのだろうか。同社は期間限定の商品をたくさん投入しているが、その中から「ヒット商品」が生まれたとしよう。店にたくさんの人が集まって、その商品が売れる。売り上げもぐーんと伸びるわけだが、その熱狂は一過性で終わるかもしれない。

 「『スマッシュヒットを飛ばして流行をつくる』といったポジションではなく、お客さまから『長く愛される』商品を提供していきたいですね。言葉で表現すれば『定番』。そのようなポジションを築くには、どうすればいいのか。やはり従業員の教育は欠かせませんし、顧客満足度も高めていかなければいけません」(若月さん)

「店舗数を増やすことにはこだわっていない」という

 最後に、このような質問をした。「上陸した当時のように『行列の絶えない店』と呼ばれたいですか?」と。若月さんは熟考することなく、「いえ、興味がありません」ときっぱり否定した。

 ドーナツの輪のように、ファンになった客はまた戻って来る。「ぐるぐるぐる」と。クリスピーが考える「定番」とは、そのような姿なのかもしれない。

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