マーケティング・シンカ論

「大量閉店」に追い込まれたのに、なぜクリスピーは“復活”したのか週末に「へえ」な話(1/4 ページ)

» 2022年10月02日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 お店の外までズラリと並ぶ行列は「人気店の証」――。どんな店なのかよく分からないけれど、長い行列ができているので、おいしい店に違いない。などと想像して、並んだことがある人も多いのでは。

 いきなりだが、時計の針を2006年に巻き戻す。日本に上陸して「行列が絶えない店」として、脚光を浴びたドーナツ店を覚えているだろうか。「クリスピー・クリーム・ドーナツ」(以下、クリスピー)だ。

22年8月に「東京国際フォーラム店」をオープン

 東京の新宿サザンテラスに1号店を構えたところ、人・人・人。有楽町のイトシアに2号店を構えたところ、こちらも人・人・人。店をつくれば黒山の人だかり状態だったこともあって、積極的に店を増やすことに。

 クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン社は15年度に最大64店舗を構えていたものの、熱狂は長く続かなかった。売り上げがじわじわ落ちていって、17店舗のシャッターを降ろすことになったのだ。

 当時、この様子をメディアはどのように報じていたのだろうか。理由を2つ挙げていて、1つは「健康志向」である。低糖質(ロカボ)の食品がヒットしたこともあって、健康ブームがやってきて、高カロリーのドーナツが敬遠されたという。もう1つは「コンビニドーナツ」である。大手コンビニがドーナツ事業に参入したこともあって、“クリスピー離れ”が進んだというわけだ。

定番のオリジナル・グレーズド
クリスピー離れが進んだ

 15年3月期に8億1000万円の純損失に陥り、3期連続で赤字が続いたこともあって「撤退」の2文字が浮かんでくる。日本にやって来て「海外セレブに愛されている」「これまでになかった味」といったフレコミで参入して、ちょっとしたブームが巻き起こるものの、数年後に「帰国」するケースも少なくない。

 同社もそうしたシナリオが選択肢のひとつに入っていたわけだが、その後、復活することに。18年3月期は4期ぶりに増益を確保し、既存店の売り上げが前期比プラスに転じたのだ。

 20年4月にコロナ禍で商業施設が閉鎖されたことによって、さすがに売り上げは落ち込んだ。が、しかしである。その年の秋に既存店の売り上げがプラスに転じて、22年9月現在もその勢いが続いているという。

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