“感情”を獲得したヒューマノイドが見る夢――「WE-4RII」の過去と未来コンテンツ時代の未来予想図(5/5 ページ)

» 2005年11月28日 17時00分 公開
[中村文雄,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5       

WE-4RIIはプラットフォームロボットへと進化する

 ロボットが喜怒哀楽の感情を表現したときに、その感情をどのように人間が受けとめたのかは、今のところアンケートでしか評価できない。科学的なデータを入手するには、ロボットとの相互作用を通じて人間の生理情報を入手する必要がある。そのために高西教授は、生体指標計測システムの開発を進めている。すでに腕の動き、心拍数、脈拍数、血圧の相対変化、呼吸数、皮膚電気活動を同時に計測できるシステムが完成しており、WE-4RIIと相互作用する人間の生体指標を計測しながら実験を行っている。

 「ロボットと人間が相互作用する中で、どのような結果が出るかを定量的に測定したい。生体指標の専門家のアドバイスを受けながら実験を進めている。脳波も測定したいが微弱で採取しにくいため、脳波に代わる指標がないかと探している」(高西教授)

生体指標計測システム。全24自由度のモーションキャプチャ、心電計、脈波計、呼吸計、発汗計などのセンサーで構成されたシステム

 高西教授が参加する国際プロジェクトにおいて、脳科学者などが研究で得た感情メカニズムに関する知見を、ロボットで検証する試みが開始される予定だ。人間を使う実験は人権や個人情報の観点から難しい点が多いが、人間の機能を持つヒューマノイドなら問題はない。そのような実験にハードウェアとソフトウェアの環境を提供するプラットフォームロボットが求められており、WE-4RIIは候補ロボットとして名前が挙がっている。将来、人間の脳機能を解明するために、WE-4RIIの進化形がプラットフォームロボットとして活躍するだろう。

 人間の代表的な動きである「2足歩行」で世界を驚かせた研究室が、今度は「感情」という未知のモノに挑戦して、世界最先端の研究を推進している。前庭動眼反射の機能を搭載したロボットが、あまりに“人間くさい”動きをしたことがきっかけで、高西教授は当初は見当もつかなかった“感情”に挑戦することになった。ロボットは、新たな機能を一つ獲得していくたびに、さらに新たな機能を人間に要求しているようにも見える。

 ロボットの進化は、新しい学問領域を吸収することで推進される。工学と生理学が出会ってロボットの反射運動の研究が進み、工学と心理学が出会って感情の研究が進んだ。思いも寄らぬ学問領域の融合が大きなブレークスルーとなる。

 「今後は、脳の中での反応まで言及できる研究者と連携していくことが必要だ」と高西教授が語るように、ヒューマノイドは脳科学など新たな学問領域を吸収して、さらなる進化を遂げるだろう。WE-4RIIが「感情」を“望んだ”ように、“感情”を獲得したヒューマノイドが次に見る“夢”は何なのか、早く知りたいものだ。

資料提供:早稲田大学理工学部機械工学科 高西研究室

関連キーワード

ロボット | | 心理学 | 人工知能


前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ