Oracleがナンバーワンにこだわるのは、「顧客により高い価値を提供したいからだ」とエリソンCEOは話す。企業向けのセキュアサーチ技術でもナンバーワンでありたいとし、Google対抗の検索エンジンを発表した。
「イノベーションと買収のコンビによってナンバーワンの地位を築き、顧客により高い価値を提供したい」──1998年以来、7年ぶりに日本の顧客やメディアの前に登場したOracleの総帥、ラリー・エリソン氏は、PeopleSoftやSiebelというHCM(Human Capital Management)とCRM(Customer Relationship Management)のリーダーを相次いで買収、この7年間で大きく変貌した同社の成長戦略をそう表現した。
「買収は自己満足のためではない。ソフトウェアの世界ではより多くの顧客を獲得すれば、多くの研究開発費を投じ、イノベーションを継続できるし、アグレッシブな価格政策も可能だ。ナンバーワンの地位を築くことはその意味で重要なのだ」とエリソン氏。
すでに磐石ともいえる地位を築いているデータベースでは、グリッドアーキテクチャーによって、メインフレーム級の高性能、高信頼性を低コストで提供できるまでになったし、IBMを追いかけるミドルウェアでもJavaやWebサービスという標準をいち早く取り入れ、さらにスイートとして統合することによって顧客の負荷を下げようとしている。
「標準は常に独自仕様に打ち勝つと信じている」とエリソン氏。
買収によって様変わりしたアプリケーションも、HCMとCRMではナンバーワンとなり、ERPでも北米市場ではSAPを追い抜いている。
さらに負けず嫌いのエリソン氏は、製品別や地域別ではなく、業種別に見るべきだとし、「通信や金融でナンバーワンだ」と胸を張った。
「イノベーションと買収を繰り返すことでナンバーワンを狙い、積極的な研究開発投資によって、例えば、リテール業界向けのさまざまなアプリケーションを開発し、継続的な価値を提供していける」とエリソン氏。
彼がナンバーワンの地位を築きたい領域は、まだまだある。ソフトウェア業界は絶えず変化をしており、次の潮流となりつつある分野が生まれてくるからだ。
キーノートでエリソン氏は、ソフトウェアをサービスとして提供するASP事業と検索エンジンの領域を挙げ、特に後者では、「検索のイノベーターであることは、われわれのブランドのために重要だ。インターネットの検索ではGoogleがイノベーターだが、エンタープライズ市場においては、われわれが先駆者として牽引する立場でなければならない」と話した。
この日、Oracleが日本発で世界に向けて発表した「Oracle Secure Enterprise Search 10g」は、米国では2004年12月のOracle OpenWorld San Franciscoでスニークプレビューされ、キーノートで電子メールなどを含めた多様なデータの中から通常であれば埋もれてしまう情報を探し出すデモが行われている。
検索できるデータは、Webページだけでなく、基幹業務の情報をはじめ、PDF、Office文書、電子メール、Documentumのような文書管理システムなど、実に多様だ。企業内に導入することを前提としているため、ユーザー認証機能と連携し、閲覧が許可されているデータしか検索結果に表示されることはない。
「Googleの検索エンジンは人気で、彼らもエンタープライズ向けに販売しているが、セキュアサーチの技術は未成熟で、市場に優れた技術がなかった。30年以上、企業の情報を堅牢に保護してきたわれわれこそが斬新な新しい検索アプローチを発表できる資格がある」とさえ言い切った。
「数年ぶりの大掛かりな発表だ。しかも、わずか48時間で稼動し、すぐに成果が得られる」と導入コストの低さも強調した。
日本オラクルによれば、東京大学がOracle Secure Enterprise Search 10gの採用を決めているという。
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