市役所にコンシェルジュが登場する? 横須賀市が切り開く電子行政システムの未来激変! 地方自治体の現実(4/4 ページ)

» 2006年04月28日 10時09分 公開
[中村文雄,ITmedia]
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システム設計できる人材を確保することからスタート

ITmedia :森山課長が指揮を執っている情報政策課は、どのような体制で情報化を進めているのですか。

森山 情報政策課ができたのが10年前の1996年です。10年経過しましたが、基本的なことは前半5年で決定しています。ですから、必要な人材を市役所内でスカウトしながら情報政策課の能力を拡充していきました。設立当初は3名でしたが現在では34名の陣容になりました。システム構築に携わる人材は20名程度で、それを指揮できる人材が4、5名います。「情報政策課では自分を市役所職員とは思うな。この部署をベンチャーだと思え」と部下にいつも言い聞かせています。どんどん他部署のことに口をはさんで業務を改革していくのが使命なのです。「本論を飲み込ませるために、手段から入ってもよい」と言っています。システムという目に見える手段から入る方が一般職員には分かりやすいのです。

ITmedia 横須賀市のシステムは非常に使いやすく、効率化が図られていますが、そのためのコツがあるのですか。

森山 情報政策課の職員には「3人前分のスキルを持て」と言っています。ネットワークやコンピュータに関する知識があることは当たり前。システム化対象業務の係長クラスのスキルを持たないとシステム構築を進めることは難しい。それに加えて企画・管理ができることです。3人前分のスキルを持った職員にするには、およそ5年かかります。

ITmedia 3人前分の人材を育てるためには、どのような教育をしているのですか。

森山 システム設計する人にはセンスが必要です。ITコンサルタントなどの専門家はどうしても難しいモノを作りたがりますが、実は難しいことを単純化するのが一番難しいことなのです。ですから、ITというツールを使いこなすセンスを持つ人間が設計しなければいけませんが、そのセンスは天性のものです。そのセンスを持った人材を訓練して、システム設計してもらいます。もし、すべて教えられることなら、そのような人がどこにでもいるはずですが、そうではないことは周囲を見れば明らかでしょう。

ITmedia 才能のある人材をどのように見つけているのですか。

森山 一番分かりやすいのは忙しい職員を探すことです。忙しい職員は実際に良い仕事をしていますから、情報政策課と触れ合う機会があります。10年前に情報政策課が開設されたときから、情報化研修に力を入れており、わたしは入門編を担当して、延べ3000人くらいに教えてきました。ですから、横須賀市役所のどの部署の誰がITに関してスキルを持っているのかを知っています。そこから人材を見つけて、今の部署を作ってきたのです。

「本当に変えたい」と思った自治体は成功している

ITmedia :森山課長が電子行政化を進める原動力はなんですか?

森山 基本にあるのは「役所は市民に向いて仕事をしていないのでは?」という怒りにも似た感情で、それがわたしのモチベーションになっています。

ITmedia 電子行政化を進める際に留意している点があれば教えてください。

森山 システムを導入する際は、業務改革を実施するチャンスなのです。当たり前と思っていたことでも、必ず点検するようにしています。後、重要なことはITを導入して制度や業務改革に成功した場合には、その部署の手柄だということです。わたしたちは常にサポートをしているだけです。

ITmedia これからIT化を進める自治体にアドバイスをお願いします。

森山 情報化を進める際に、基本的なことを無視しているケースが多いように感じます。「自治体業務が情報に依存している」という当たり前のことが分かっていないのです。だから、「ITは最近登場してきたものだから、経費削減するためには余計なIT投資をやめた方がいい」と考える人もいます。しかし、そうではありません。自治体は情報処理産業なのです。「情報に依存している役所がITを上手に活用しないでどうするのか」と思います。それでは行政改革も行政の効率化もできるわけありません。

 1つひとつ基本のところを見直して、そこを基盤にしてIT化を進めてほしいと思います。わたしたちが構築してきたシステムの考え方は、おおむねホームページに掲載されていますから、関心のある方にぜひご覧いただきたい。「本当に変えたい」と思う人が本気でやれば、電子行政システムの導入は成功するはずです。

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