勃発! 年末年始を巡る仁義なき戦い女性システム管理者の憂鬱(4/4 ページ)

» 2006年12月26日 08時00分 公開
[高橋美樹,ITmedia]
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 親会社に組織構成を持ち出されてしまっては、子会社の社員である運用マネジャーは何も言いえない。親会社を挟んで、同じ会社のメンバー同士がいがみあう形になったが、最後は親会社を味方に付けたわたしのA課長の大勝利でこの戦いは幕を閉じた。

 実は、情報システム部と運用チームは親会社、子会社の立場ながら、運用マネジャーの一歩も譲らない姿勢が原因で、しょっちゅう対立していたのだ。情報システム部はなんとしても運用チームの肩を持つつもりはなかったのだった。

 それほど我がA課長が頑張ってくれたにも関わらず、わたしは少し残念な思いを抱いていた。2000年2月にシステム管理の仕事を始めたわたしは、近年、システム管理史上最大のイベントと言われた「2000年問題」を体験していなかったからだ。

 うわさで聞く会社での年越し――当番を任された人のいい担当だけが集まり、急ぎでもない仕事をのんびりこなしながら、カウントダウンを迎え、無事が分かるとシャンパンやビールで乾杯。そんな伝説を聞かされていたわたしは、会社でのお正月にほんの少し憧れもあったのだ。実際、担当すればそんな悠長な現場でもないのだろうが、それでもその後の勲章として飲み会の席では「そういえばあの年は、正月から出社してさあ」なんて自慢したかったようにも思う。

休暇を一番楽しみにしていたのは、やっぱり

 それから年末に向けて飛び去るように時が経ち、ついに仕事収めの日を迎えた。その日は、業務終了一時間前から社内で納会が開催される。大きな仕事はほぼ片付け、午後からは全社的にお休みモード全開だ。わたしも毎日の作業でたまってしまった資料を片付け、机の上を整理するなどして、時間をつぶしていると、ようやく納会が始まる時間となった。会場となる会議室へ向かう途中で、なんと、そっとコートを持ち立ち去ろうとするA課長の姿を目撃してしまう。

わたし:「あ、A課長。納会始まりますよ」

A課長:「いや、実家に帰る新幹線の時間があるから、わたしは、これで。じゃ、良いお年を」

 そう言い残すと、A課長はいそいそと家族が待つ東北の実家へと旅立っていった。半年後に定年を迎えるA課長の年代では、お正月こそ最大のイベントなのだろう。うれしそうに弾むA課長の後姿と、運用マネジャーと戦っていたあの日の姿が重なる。

 そのとき初めて、この人が一番この休暇を楽しみにしていたことに気付いてしまった。

 それでは、皆様良いお年を。

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