2007年のグーグルを考えるグーグルの2006年を振り返って 第2回

2006年に展開した成長戦略で、世界最大のインターネット事業者として躍り出たグーグルの2007年と今後を占ってみたい。

» 2007年02月14日 09時00分 公開
[成川泰教(NEC総研),アイティセレクト]

インターネット広告をネット以外のメディアへ

 一見、インターネットで総花的なサービスを展開しているように見えるグーグルが、実際にはネット広告という単一の領域でしか事業を行っていないことを、今後の収益基盤の観点から問題視する向きは多い。しかし同社が考える広告事業の奥深さが明らかになるにつれ、筆者の中ではその疑問は薄らいできている。

 グーグルはインターネット広告のマッチングシステムを、ネット以外のメディア――まずは新聞とラジオ――に広げる方針を示した。究極的にはネットと同様にコンテンツに連動した広告を狙うと見られるが、まずは広告枠の管理と広告主からの入札の仕組みをベースに参入する模様で、既に一部で試験運用が始まっている。同社の売上セグメントに「インターネット以外のメディア」という一項が加わるのも、そう遠いことではなさそうだ。

 彼らがユーチューブの買収に踏み切った背景を考えるに、来るべきオンデマンド時代の映像広告にグーグルが並々ならぬ関心を抱いていることは明白だ。2006年は、グーグルがあらゆるメディアにおける広告枠に向かって本格的に動き始めた年だったのである。

広告主獲得に向けた革新的かつ緻密な戦略

 さらに彼らの革新的な取り組みは、広告主(=企業)に対しても準備されつつある。それは、このところビジネス市場を意識した動きが目立っていることでも明らかだ。会計ソフト大手のインテュイットとの提携では、会計ソフト利用者に対してグーグルの広告管理機能を提供する。同様のサービスは企業向けアプリケーションサービスを手掛けるセールスフォース・ドットコムからも提供されており、ビジネス向けの無料サービスから広告主を集める戦略が明確になっている。こうして、広告事業に集中することにより視聴者、媒体、広告主という3つの要素において自社の競争優位を最大限に活用し、革新的かつ緻密な成長戦略を仕掛けようとしているのである。

「10年連続2けた成長」もあり得なくはない

 筆者の手元にある、米国の金融機関がグーグルの業績を長期的に予想したレポートによると、今後10年間は2けたの成長を持続し、15年の売上高は600億ドルを突破するという。現在のレートで換算して約7兆円の売上高である。

 この話を、年末年始恒例の楽観的な未来予想だと一笑に付すのは簡単だ。しかし、世界経済が今後も安定した成長を続け、インターネットの利用がさらに広く、深くなり、広告市場が一定の成長と適正化を続けると仮定すると、そのようにグーグルの戦略が大きな成功を収めることは決してあり得ない話ではないといえるだろう。

 最後に、2007年のグーグルを考える上で、同社との関係において重要な役割を果たすと思われる企業を、あくまでも筆者の妄想として初夢代わりに挙げておきたい。それは、セールスフォース・ドットコム、無線LANサービスのフォン・ワイヤレス、そしてアップルコンピュータの3社である。

 とはいえ、2007年のIT市場がどうなるかということに関し、楽しい想像をかきたててくれる企業というのはなかなかあるものではない(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第十一回」より。ウェブ用に再編集した)。

※本稿の内容は特に断りのない限り2006年12月現在のもの。

(注)2007年1月、「アップル」に社名変更した。
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なりかわ・やすのり

1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。


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