5万年が1年に短縮、デング熱治療薬開発の妙手

IBM、テキサス大学医学部、シカゴ大学は、ワールド・コミュニティー・グリッドを用いたデング熱、ウェストナイル脳炎、C型肝炎の治療法発見に着手した。

» 2007年08月28日 11時43分 公開
[ITmedia]

 デング熱、ウェストナイル脳炎、C型肝炎や、黄熱病など多くの関連疾患に対する治療法は発見できるか――IBM、テキサス大学医学部、シカゴ大学は米国時間の8月23日、これらの疾患を治療・治癒する医薬品の開発を目指す、前例のない研究活動を開始した。

 「Discovering Dengue Drugs - Together(力をあわせてデング熱の治療薬を発見しよう)」というこのプロジェクトは、ワールド・コミュニティー・グリッド(World Community Grid)の演算能力を利用するもの。ワールド・コミュニティー・グリッドでは、個人のPCの使っていない時間を寄付することで仮想スーパーコンピュータを構成する。HIV/AIDSの研究を6カ月間で完了させたFightAIDS@Homeなど7つのプロジェクトが実行されている。参加するには、同Webサイトに登録の後、無償で入手できるプログラムをインストールすればよい。コンピュータがアイドル状態になると、コンピュータはワールド・コミュニティー・グリッドのサーバにデータを要求、演算を行う。

 このプロジェクトの第1段階では、ウイルスの増殖を可能にする一次タンパク質のうち1種を対象とし、このタンパク質を、ウイルスの増殖を阻止する可能性のある600万を超える医薬品分子のデータベースと照合する。そして第2段階では、どの医薬品分子がウイルスタンパクともっとも緊密に結合するのかを予測する。化合物が特定されれば、研究者は研究所や病院でこうした医薬品のテストを開始し、化合物の有効性を判定することになる。

 研究者らは、有効な抗ウイルス剤を発見するのに必要な演算を完了させるには、約5万年ものコンピュータ稼働時間が必要になると試算しているが、今回の取り組みにより、1年未満で完了する可能性があるという。

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