ハードウェアとITインフラをめぐる2008年の10大ニュースプロセッサ競争や経営環境の激変が話題に

ハードウェア市場とインフラ市場でも経済が重要な役割を演じ、多くの調査会社がIT支出予測をさらに下方修正した。AMDの分割や、同社とIntelの新チップ、ネットブックの登場などがITインフラをめぐる2008年のビッグニュースとなった。

» 2008年12月15日 12時34分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

1.経済

 数社の調査会社が2008年のIT支出は鈍化すると予測していたが、Freddie Mac(Federal Home Loan Mortgage)、Fannie Mae、Lehman Brothersが9月に破綻したのを受け、多くの調査会社が既に低かったIT支出予測を下方修正した。最大の影響を受けるPCやサーバシステムなどのハードウェアへの支出はさらに減速する見込みで、2009年の見通しもあまり明るくなさそうだ。2008年末には、IT支出動向の重要な指標となるIntelも景気後退の影響を受け、2008年10〜12月期の売り上げ予測を下方修正した。

2.AMDの分割

 この2年間にわたって赤字経営が続いたAdvanced Micro Devices(AMD)は、事業構造を大きく変える方針を打ち出した。自社を2つに分割し、製造部門を新会社としてスピンオフすると発表したのだ。AMDは今後もマイクロプロセッサの設計、開発、販売を行うが、新会社「Foundry」は、チップの製造を担当する(現時点では新会社の正式名称は明らかにされていない)。

3.Intelが新しいマイクロアーキテクチャとプロセッサをリリース

 2年ごとに新しいマイクロアーキテクチャを提供するという目標を達成すべく、Intelは8月のIntel Developer Forumにおいて、約束通り「Nehalem」アーキテクチャを発表し、同アーキテクチャを採用した最初のプロセッサ「Intel Core i7」を11月にリリースした。IntelはNehalemで幾つかの重要な変更を行ったが、その中で最大のインパクトをもたらすとみられるのが、クロック速度を高めることなくパフォーマンスを改善する統合メモリコントローラである。

4.「グリーン氏の後」のVMware

 ダイアン・グリーン氏がVMwareのCEOの座を追われ、同社の経営を任されたMicrosoftの元上級幹部のポール・マリッツ氏は、「2008 VMworld」カンファレンスで野心的なロードマップを披露した。これは、データセンター全体の管理、特に企業のニーズに応じてリソースを割り当てるクラウドコンピューティングインフラの構築の分野で主要ベンダーになることを目指したものである。マリッツ氏は、VMwareの技術は仮想化を通じて、サーバ、アプリケーション、PCなどデータセンターのあらゆる側面を管理、コントロールすることができると考えている。

5.Intel Atom

 Intelは2008年、x86マイクロプロセッサの新たな市場の創出を狙って2つの新プロセッサを投入した。最初のAtomは携帯情報端末用で、もう1つのAtomはIntelが「ネットブック」と呼ぶ新タイプの低価格ポータブルノートPC用である。携帯情報端末市場はまだ本格的に立ち上がってはいないが、ネットブック市場は既に立ち上がった(ウルトラポータブルノートPC市場もテイクオフしつつある)。これはIntelにとって新市場の開拓につながったが、その一方で、Celeronなどの従来型プロセッサがその影響を受ける格好になった。

6.ネットブックがテイクオフ

 Intel Atomチップの登場により、Asus、Dell、Hewlett-Packard、Lenovoなど数社のベンダーが低価格のネットブックやウルトラポータブルPCの生産を開始した。元来は新興市場諸国向けに開発されたこれらのポータブルPCが、西欧や米国などの成熟市場に進出したおかげで、コンシューマーと企業の購入意欲が冷え込む中にあってもPC市場は活気づいた。

7.IBMがペタFLOPSの壁を突破

 IBMは6月、スーパーコンピュータ「Roadrunner」でペタFLOPS(毎秒1000兆回の演算処理)の壁を公式に突破したと発表した。このRoadrunnerシステムは、米エネルギー省のロスアラモス国立研究所に納入されたもので、IBMのCellプロセッサとAMDのOpteronチップを組み合わせることにより、ペタFLOPS級のパフォーマンスを達成した。

8.SSD搭載ノートPCが登場

 LenovoのノートPC「ThinkPad X300」を皮切りに、PCベンダー各社は自社のノートPCでSSD(Solid State Drive)の採用を拡大した。ベンダーにとってSSDのメリットは、薄型・軽量で堅牢なPCのデザインが可能になることだ。NANDフラッシュメモリの低価格化により、SSDを搭載したノートPCがさらに一般化し、その価格も低下するものと予想される。

9.AMDが45nmプロセスを採用

 AMDは2008年の終わりを気持ちよく迎えたが、Intelとの苦しい戦いは2009年も続きそうだ。AMDは11月、45nm(ナノメートル)プロセスを採用したOpteronプロセッサ(コードネーム「Shanghai」)を発表した。Shanghaiでは、65nmバージョンに関連した問題が解消されているようだ。AMDは大した問題もなく同プロセッサのリリースにこぎ着け、発表当初からパートナー各社がサポートを表明した。

10.Sun Microsystemsの苦境

 Sun Microsystemsは、約6000人に上る人員削減の発表で今年を終えることになった。ミッドレンジおよびハイエンドのサーバシステムの売り上げ減少という現実を受け入れたのだ。Sunはx64(x86-64ビット)サーバでは堅調な売り上げを維持したものの、ハイエンドシステムの販売低迷に活路を見いだせないでいる。米国の金融サービス市場で多くのハードウェアを販売しているSunは、ウォール街から始まった世界的金融危機の犠牲にもなった格好だ。

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