AMDは、11月13日に同社初の45ナノメートルプロセスルールを採用したCPUとして、これまで“Shanghai”という開発コード名で知られてきたクアッドコアOpteronの2300番台5モデル(デュアルソケットサーバ向け)と、同じく8300番台4モデル(4ソケットサーバ向け)を発表した。最高動作クロックはOpteron 2384とOpteron 8384の2.7GHzで、今回登場したすべてのモデルが消費電力75ワット(ACP、平均消費電力)となっている(熱設計時消費電力であるTDPは95ワット)。
消費電力を55ワット(ACP)に抑えたHE版、消費電力を105ワット(同)へ引き上げる代わりに動作クロックを向上させるSE版は、2009年第1四半期に追加される予定だ。また、時期は明言されなかったものの、1ソケットサーバ向けのOpteron 1000番台(開発コード名“Suzuka”)も、後に投入するとしている。
AMDの45ナノプロセスルールは、基本的に従来の65ナノプロセスルールの延長にある。SOIウェハ、歪みシリコン技術など、主要な要素技術を継承しつつ、改良を重ねた。AMDは製造部門を別会社に分離する意向を示しているが、現時点で次世代以降の製造技術ロードマップに変更はない。
次の32ナノプロセスルールではSOIウェハに加え、バルクウェハ(バルクシリコン)を用いたプロセス技術を採用すると同時に、High-k/Metal Gate技術を採用する。ただし、主力となるCPUについては引き続きSOI技術が用いられる見込みで、バルクウェハはGPUやチップセット、あるいは分離される新会社が展開する予定のファウンダリ事業で利用されることになる(CPUとGPUの合体であるFusionがSOIとバルクのどちらになるかは注目される)。
製造プロセスが45ナノメートルに縮小されたことの最大の利点は、3次キャッシュメモリが6Mバイトに増量されたことに現れている。従来のクアッドコアOpteronのマイクロアーキテクチャでは、1次、および2次キャッシュメモリがコアごとに独立しており、4つのコアで2Mバイトの3次キャッシュメモリを共有していた。Shanghaiでは基本的なキャッシュメモリのアーキテクチャ(コアごとに独立した512Kバイトの2次キャッシュメモリ)は不変のまま、3次キャッシュメモリが3倍になったことになる。
3次キャッシュメモリがほぼ同じ(小改良の)マイクロアーキテクチャでありながら、Shanghaiは同一クロックのBarcelonaに対し、約20%の性能向上が図られたとAMDは説明している。さらに45ナノプロセスルールの採用により、最高動作クロックが2.7GHzに引き上げられたこと、メモリクロックが400MHzに向上したこと(DDR2-800対応)により、トータルで従来のBarcelona 2.3GHzに対し、35〜50%の性能向上が期待されている。その一方で、消費電力はアイドル時で35%、ロード時で10%ほど引き下げられており、1ワットあたりの性能はさらに向上したこともAMDは強く訴求している。
Shanghaiのもう1つの特徴は、メモリクロックを除き、ソケット、消費電力、熱設計などの点で、既存のSocket Fプラットフォーム(HyperTransport 1.0×3、デュアルチャネルDDR2メモリ)と互換性を持つことだ。DDR2-667メモリで構わなければ、そのままBarcelonaと差し替えて運用できる。初期においてShanghaiは、DDR2-667メモリとHyperTransport 1.0に対応した現行の第2世代プラットフォームで使われることになるだろう。
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