クルマは95%の時間停まっている――シャープが挑む「部屋になるEV」と、大阪・堺筋本町への本社移転が示す覚悟IT産業のトレンドリーダーに聞く!(1/3 ページ)

» 2026年01月02日 06時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

 シャープが発表した2025年度上期(2025年4月〜9月)の連結業績は、デバイス事業のアセットライト化の影響があり減収となったものの、営業利益は大幅に増加した。中期経営計画の最初の半年は、好調な出足となったといえるだろう。

 さらに、この好調ぶりを受けて、2025年度通期見通しを上方修正してみせた。代表取締役 社長執行役員 CEO 沖津雅浩さんは、「中期経営計画は順調に進ちょくしており、営業利益は想定を大きく上回るペースで改善するなど、さまざまな成果が表れている」と出足に自信をみせる。

 実は、この成長を下支えしたのが、DynabookによるPC事業の好調ぶりだ。インタビュー後編では、PC事業への取り組みやシャープのDXへの取り組み、そして、「新産業領域」と呼ぶ、EVやAIサーバといった新規事業への取り組みなどについて聞いた。

シャープ 代表取締役 社長執行役員 沖津雅浩CEO 中期 復活 鴻海 創業 再成長 シャープ 代表取締役 社長執行役員 沖津雅浩CEOにお話を伺った

営業利益が想定超え 好調シャープを支える「Dynabook」の底力

―― 中期経営計画のスタートとなる2025年度上期業績は、好調な結果となりましたね。

沖津 減収増益の結果となりました。減収については、デバイス事業のアセットライト化を進めていますから、その点は織り込み済みですが、営業利益は想定を大きく上回るペースで改善しました。

 白物家電などのスマートライフについては、市場環境の厳しさや為替の影響、競合が増えている状況にありますが、下期には付加価値の高い空気清浄機などの販売が増加すること、モデルミックスやルートミックスの改善が進むことから、上期比では増益を見込んでいます。

 上期に特に大きく成長したのが、DynabookによるPC事業です。PC事業では、国内のB2BおよびB2Cが共に好調で、中でもB2BではGIGAスクール向けPCが大きく伸長しました。また、Windows 10のサポート終了に伴う買い替え需要もあり、官公庁や自治体向け、大企業向けなども引き続き堅調でした。B2Cはスタイリッシュなデザインが好評で、積極的に販促を実施した効果がありました。

シャープ 代表取締役 社長執行役員 沖津雅浩CEO 中期 復活 鴻海 創業 再成長 2025年度の通期業績予想は上方修正された

―― シャープにとって、Dynabookはどういう存在なのですか。一度撤退したPC事業を東芝から買収する形で再参入し、その事業が今の業績を支えているという構図です。

沖津 Dynabookは、当社にとって重要な事業であることに間違いはありません。ご指摘のように当社は一度、PC事業を撤退していますが、かつてのシャープのPC事業と今のDynabookによるPC事業とは全く異なるものです。例えば、Dynabookは官公庁や大手企業から高い評価を得ており、これはかつてのシャープのPC事業にはなかった部分です。

 そして、この販路は当社全体としても、もっと積極的に活用していくことができるといえます。またDynabookはPCだけで収まる事業ではなく、もっと広げていくことが必要だと思っています。

 当社はスマートワークプレイスという切り口で、Dynabookとシャープブランドのスマホや電子黒板、ディスプレイ、XRグラスなどを組み合わせた提案もできます。当社におけるPC事業の考え方は、Dynabookと共にシャープブランドの周辺事業も拡大していくことです。

 PCそのものに投資をするのではなく、PCと連携する領域に投資をし、新たな事業を育てていきたいと考えています。Dynabookの社員には、シャープグループの一員としての意識を高めてもらい、連携の幅を広げていきたいですね。

シャープ 代表取締役 社長執行役員 沖津雅浩CEO 中期 復活 鴻海 創業 再成長 シャープの業績を支えるDynabook

―― シャープでは、DXについてはどんな取り組みを進めていますか。

沖津 残念ながら当社の社内DXへの投資には遅れがあり、ようやく動き始めたところです。ペーパーレス化が進展し、私の決裁にはハンコがなくなり、どこにいても決裁が可能になりました。

 ただ、シャープのDXは、まだこのレベルです。新たにCDO(Chief Digital Officer)を設置し、DXに対する投資を積極化していきます。社内には設計や開発、品質に関して多くのデータが蓄積されていますから、これらをデジタル化して、設計者が効率的に開発したり、若い人たちが自由に活用できたりすることで、開発期間の短縮や業務の効率化につなげることを目指します。

 2026年春には、本社を現在の大阪府堺市から大阪市内の堺筋本町に移転します。これが、社内DXを推進するいいきっかけになると考えています。書類をデジタル化し、新本社にはなるべく紙を持っていかないようにすることもその1つです。本社移転までに社内の紙を半減したいですね。当社の社員数は減っていますから、DXは待ったなしで取り組む必要があります。

シャープ 代表取締役 社長執行役員 沖津雅浩CEO 中期 復活 鴻海 創業 再成長 2026年に大阪市中央区の「堺筋本町」に本社を移転する

 また、AIを活用して鴻海の役員が話をしたことをリアルタイムで翻訳して情報を共有したり、コミュニケーションを活性化したりといったことも考えています。従来は、鴻海から出向しているメンバーを通じて董事長(日本の代表取締役や理事長、会長などに相当)や本社とやりとりしていたのですが、今は直接、鴻海の劉揚偉(ヤング・リウ)董事長ととやりとりするケースが増え、鴻海の戦略を正しく、深く、迅速に理解できるようになりました。ここにもAIの翻訳機能を活用し、それぞれが中国語と日本語を使ってやり取りができるようになっています。

 DX戦略については、まだ対外的な公表はしていませんが、中期経営計画の中では重要な取り組みの1つに位置付けています。今後、CDOから当社のDX戦略について発信する機会を作りたいと思っています。

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