シャープは11月10日、2025年度上期(2025年4月〜9月)の連結業績を発表した。全体としては前年度同期と比較して減収増益となったが、DynabookによるPC事業の好調ぶりが増益に大きく貢献した。
シャープにおいて、Dynabook(PC事業)は「スマートワークプレイスビジネスグループ」の傘下にある。決算上、同グループは「スマートワークプレイス」セグメントとして計上される。本セグメントの2025年度上期の業績は、売上高が前年同期比2.9%増の4085億円、営業利益は同46.6%増の329億円で「増収増益」となった。
シャープの沖津雅浩社長は「PC事業は主力となる国内のB2B(法人向け)およびB2C(個人向け)が共に好調だった」と前置きした上で、それぞれの好調要因を以下のように説明した。
B2BではGIGAスクール向けPCが大きく伸長した他、官公庁/自治体向け、大企業向けなども引き続き堅調に推移した。一方B2Cでは、スタイリッシュなデザイン(のノートPC)が好評で、積極的に販促を実施した効果があった。
国内のPC市場は、10月14日のWindows 10のサポート終了に伴う買い替え需要や、本格化しはじめた「GIGAスクール構想」の第2期(Next GIGA)に伴う義務教育課程における学習用端末(ノートPC/タブレット)のリプレースといった動きがあり、2025年度上期は活況を呈していた。
沖津社長CEOは、「国内PC市場全体では、前年比1.4倍で成長したとされているが、Dynabookは、それを上回る成長を遂げている」と好調ぶりを示す。Dynabookは、2024年度の国内法人向けPC市場でトップシェアを獲得した実績を持つ。その勢いは持続しているようだ。
2025年度の通期(2025年4月〜2026年3月)で見ると、スマートワークプレイスセグメントの業績見通しは、売上高が前年比2.7%減の8140億円、営業利益は同7.1%減の555億円と減収減益の見通しとなっている。
しかし実は、これは8月の第1四半期決算で提示した見通しと比べると、売上高で140億円、営業利益で135億円の上方修正をしている。これは「上期にPC事業が想定以上に上振れした」(沖津社長)ことが原因となっている。上期におけるPC事業の“上振れ”は、通期見通しを上方修正するほどの勢いだったことが見て取れる。
しかし2025年度下期(2025年10月〜2026年3月)“だけ”の業績予想を見ると、状況は大きく変化する。端的にいうとDynabookは一転して厳しい見通しとなっているのだ。
下期におけるスマートワークプレイスセグメントの営業利益は、上期から103億円のマイナスを想定している。このマイナスのうち、80億円強がDynabookによるものだという。沖津社長は以下のように説明する。
スマートワークプレイス(ビジネスグループ)全体で見れば、MFP(複合機)やインフォメーションディスプレイの販売増によるプラス影響はあるものの、Windows 11への切り替え特需の反動によって、PCの販売減が想定される。10〜12月は好調を維持できると見ているが、2026年1月からは特需の反動の影響が大きく出てくるだろう。第4四半期は販売台数が大きく減少する(と見込んでいる)。
ただ、沖津社長の懸念材料は、販売数量の減少だけではない。メモリ価格の上昇も懸念だと語る。
メモリ不足と価格上昇は、上期から既に始まっており、(PCに対する)旺盛な需要に対して必死になってメモリを集め、生産を続けてきた。毎月、生産に必要な数量をかき集めているため、在庫が翌月分まであるという状況ではない。在庫を確保できているわけではないため、≪メモリ価格の値上がりはDynabookの収益悪化にすぐ影響することになる。
メモリ価格は2〜3割の上昇を想定しているが、もっと上昇する可能性もある。
つまり、上期に好調だったPC事業に対して、下期は「販売数量の減少」と「メモリ価格の上昇」という2つの課題が立ちはだかるというわけだ。
沖津社長は「PC事業の収益性は、下期の全社営業利益に大きく影響を与えることになる」と警戒する。
下期の利益予想の組み立て図。スマートワークプレイスセグメントはMFPとインフォメーションディスプレイの販売増によるプラスがある一方で、特需の反動によるPCの販売減と、メモリを始めとする価格の上昇がマイナスとなると見込まれているそして、これら2つの課題は2026年度以降にもマイナス要素として影響する可能性がある。
シャープは、2027年度を最終年度とする中期経営計画を推進しており、連結営業利益で800億円を必達目標に掲げている。
計画上DynabookによるPC事業は、市場環境の変化に伴って2026年度以降に減速することを想定してはいた。しかし、予想できていた落ち込みをどうカバーするかを、描き切れていない状況であるともいえる。「営業利益800億円」の達成には、これを早期に描くことが重要なポイントになる。
沖津社長は危機感を隠さない。
(Dynabookでは)XRを使用した新たなソリューション事業の立ち上げ、PCの購入からメンテナンス、廃棄までのPCライフサイクル全体をカバーするサービスの提供、生成AIを活用した新たなサービスの導入、スマートワークプレイスビジネスグループ内の通信事業と組み合わせた新ビジネスの創出を検討している。2026年度にこれらの事業が広がりを見せ、挽回をしないと、業績が大きく落ちることになる。
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