「mixiのようなポータル機能をメーラーで実現したかった」――東京薬科大学Google Appsを採用しなかった理由も(1/2 ページ)

東京薬科大学はメールシステムを刷新し、10月より稼働させている。利用頻度が低かったメーラーを情報共有の基盤にするために同大学が考えたのは、「mixiのようなポータル機能をWebメールで実現すること」だった。

» 2008年12月23日 08時30分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 薬学部と生命科学部を持つ東京薬科大学は、学生や教員ごとに異なるドメインを取得し複数のメールシステムを使っていた。利用頻度はユーザーごとにばらつきがあり、中には「一度ログインをしただけでその後はまったく使わない」といったユーザーもいた。

 電子メールを中心に情報共有を図り、教育に生かそうと考えていた同大学にとって、学生や教員が自発的に使うメールシステムの構築は重要課題だった。そこで同大学はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の「mixi」の特性を参考にして、5500人規模の学生や教員が使うメールシステムを刷新、10月に本稼働させた。

 業務で利用する企業だけでなく、大学などの教育機関でも電子メールは必須となりつつある。そんな中、東京薬科大学はメールシステムの刷新により、電子メールを軸に情報共有の基盤を整備した。激化する大学間競争が引き起こす環境の変化に柔軟に対応できるオープンなシステムを構築し、学生に選んでもらえる大学を目指すように努めたという。

mixiのようなWebメールシステムを作りたかった

 「mixiのようなメーラーにしたかった」。メールシステムの導入に携わった同大学生命科学部の森河良太講師は、刷新に当たりmixiを手本にした。

 東京薬科大学ではノートPCを学生ごとに配布し、学内情報やスケジュールなどの情報共有の基盤としてメーラーを使ってもらうように取り組んでいた。だが多くの学生はメーラーを使わなかった。「600人の学生に返信を促す内容のメールを送ってみたが、返答率は5%未満」(森河氏)となるなど、「携帯電話は使うが、PCからわざわざメーラーを立ち上げるのは面倒」というのが学生の本音だった。

image Zimbra導入に携わった面々。上段左より、同大学生命科学部の森河良太氏、薬学教育推進センター長の加藤哲太教授、情報処理教育センター助教の宮川毅氏、下段左より、ドラッグラショナル研究開発センターの小杉義幸准教授、学務部庶務課の松崎日出海係長

 メールシステムの刷新を検討していた当時、学生がmixiを頻繁に使っているのを森河氏は目の当たりにした。PCを使わないはずの学生が、自らPCを開いていた。

 mixiで日記を書くと、mixiを使うユーザーのトップページに更新情報が反映される。日記を読んだ人がコメントを書き込むと、書いた人のページに「コメントがあります」という赤色の表示が出る。

 「mixiは、最初にトップページを見るという能動的な行動を取れば、その後は更新された情報が受動的に得られる」(森河氏)。こうした仕組みをメールシステムで実現できれば、学生が自発的にPCからメーラーを立ち上げてくれるようになる。「電子メールを軸に、カレンダーや教育システムなどの情報や機能を提供するポータルサイトのようなメーラーに刷新する」(同大学学務部庶務課の松崎日出海係長)ことで、利用率の底上げができると考えた。

電子メールの本文と外部情報を連携へ

 このコンセプトの実現に当たり東京薬科大学が選んだ製品は、電子メールやカレンダー、ドキュメント、VoIP機能などを統合したWebメールシステム「Zimbra Collaboration Suite」(以下、Zimbra)。システムの構築に着手したのは2008年7月。9月まではテスト稼働などに費やし、10月初頭に本稼働を開始した。現在電子メールやスケジューラー機能などを使えるようにしている。

ログイン画面メールの本文表示 東京薬科大学が独自に使っているWebメールシステムのイメージ

 メーラーを軸に情報のポータルサイトを作る――このコンセプトを実現するのに効果的なのは、Zimbraが持つ外部サービスとの連携API「Zimlet」だった。

 Zimletを使うと、メールの本文内に記載しているURLや日付、住所などを、関連するWebサービスと結び付けて表示できるようになる。同大学では、スケジュールや休講情報と電子メールの連携や、「医薬品の名称にカーソルを合わせると薬品情報をポップアップで知らせる」(森河氏)機能の実装などを計画している。

 将来的には、オープンソースの教育管理ソフトウェア「Moodle」や文書配信サービス「@Tovas」、ファイル管理システム「Xythos」などをメーラーから使えるようにする構想もある。あらゆる情報を確認できるポータルサイトとして、メーラーを昇華させる考えだ。

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