デスクトップ仮想化を過小評価するMicrosoft

Microsoftは仮想デスクトップは大規模実装には合わないとしているが、同社はファットクライアントを使ってもらうことで恩恵を受ける立場にある。

» 2009年03月06日 13時03分 公開
[Cameron Sturdevant,eWEEK]
eWEEK

 米MicrosoftはWindows 7のプロモーションツアーで「Windows and the Enterprise」ワークショップを行ってきた。このワークショップの主なメッセージの1つは「仮想デスクトップインフラ(VDI)は、大規模実装には合わない高額な提案だ」というものだ。

 同社は、PC上でファットクライアントを使い続けてもらうことで恩恵を受けるため、このテーマについて言えば、信頼できる情報源ではない。最近サンフランシスコで行ったプレゼンテーションで、同社の担当者はMicrosoft VDIは100シートまでの実装に適しているかもしれないが、それ以上の規模には適さないと語った。同社はVDIを含む大規模実装に関してCitrix Systemsと提携している。

 今VDIに反対するもっともな理由は幾つかある。わたしが1月に指摘したように、VDIサポートに必要なコンピューティングバックエンドは相当な規模になる。ストレージやCPUなどのローカルリソースを、データセンターで提供しなければならなくなる。デスクトップと付随するアプリケーションを構成する際には、信頼性のあるネットワーク接続とネットワーク容量がまったく新しいレベルの重要性を帯びてくる。

 VDIにはサーバ仮想化――今のITコスト削減の有望株――との大きな差違をもたらす重要な特徴がある。デスクトップワークロードは仮想化サーバで通常見られるよりもはるかに多くのアプリケーションにかかわっている。またこれらのアプリケーションの組み合わせは、サーバよりもデスクトップの方がずっと多様だ。最後に、ユーザーはデータセンターサーバで、従来にはない方法でデスクトップワークロードを扱う。ユーザーは、しばしば「単に仕事をしようとしただけ」と称し、デスクトップにありとあらゆる誤った動作をさせる。

 ワークロードの多様性と、ユーザーとのやりとりの多さが相まって、簡単には克服できない大きな課題を生み出している。しかし今はこの課題をかなり小さくできる技術の選択肢と進歩が生まれている。その1つ――シンクライアント――には疑問がある。大規模に採用できるレベルに達したと何度も言われてきたからだ。もう1つの選択肢はもっと実践的な性質を持つ。リモートデスクトッププロトコル(RDP)への移行だ。これは双方向オーディオ・ビデオの処理により適しており、シンクライアントに電話サービスを加えられる。

 Windows and the Enterpriseワークショップも含め、わたしは仮想デスクトップを強化する方向へ大きく踏み出すオーディオ・ビデオ機能のデモを幾つか見てきた。双方向オーディオ・ビデオの進歩の中には、仮想デスクトップ環境でCAD/CAMアプリケーションをサポートする先駆けとなりそうなものもある。今のVDIはこうした用途にまったく適していない。

 VDIに賛成する、あるいは仮想デスクトップ製品を検討する――現時点ではこちらの方が可能性が高い――ポイントは幾つかある。デスクトップの集中管理はこの技術に魅力を感じる重要な点の1つだ。デスクトップ機能とアプリケーションを企業のマネジャーの手元で管理する――「エンドユーザー」とも「ITスタッフ」とも言っていない点に留意してほしい――ことを、VDIを使ってコスト効率の高い方法で実現できる。マネジャーは有能なITスタッフの手を借りて、エンドユーザーがどのツールを仕事に使えるようにするかを決定できる。

 これらのツール――アプリケーション、サービスと呼ぼう――は配備し、適切に構成でき、仕事を始めるときから正常に稼働する。VDIは大規模なデータの重複を取り除く戦略的なプラットフォームを提供する。不正ソフトのインストールなどのマルウェア攻撃を許してしまうユーザーによるデスクトップ変更を防ぐことで、よりセキュアな作業環境も提供する。

 MicrosoftはVDIを大規模ソリューションとして見ることができないようだが、それはVDIがエンドユーザー向けシステムでのWindowsの必要性に疑問を投げ掛けるからだ。このことはVDIに関心を持っているIT管理者や企業リーダーの妨げにはならないはずだ。デスクトップアプリケーション構成の管理によるコンプライアンス強化、頻繁なデスクトップ刷新によるセキュリティ強化、ロックダウン強化というメリットは、ファットクライアントが終わりに近づいているかどうかを問う強力な理由となる。

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