社内への連絡フローを自動化する新概念――米InInが開発IP基盤への統合でコスト削減

複数の通信手段を連携活用する「ユニファイドコミュニケーション」から一歩進んで、連絡プロセスを自動化する新たなコミュニケーション概念を米Interactive Intelligenceが提唱した。テレフォニーシステムの統合とプロセスの自動化がコスト削減につながるという。

» 2009年04月02日 08時55分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 2007〜2008年にかけて国内の企業向けテレフォニー市場では、電話や電子メール、インスタント・メッセージングといった通信手段を連携させて円滑な連絡体制を構築する「ユニファイドコミュニケーション」の製品やサービスが多数登場した。通信手段を統合化の次なるステップとして、連絡プロセス自体を自動化するという新たな概念を米Interactive Intelligence(InIn)が提唱している。

ブロウ上級副社長

 コールセンター向けにIP電話やFAX、メッセージング、プレゼンス管理などコンタクト業務に必要な機能を統合したパッケージ製品「Customer Interaction Center(CIC)」を主力とする同社は、AvayaやCisco Systems、Alcatel-Lucent、Nortelといった大手ベンダーが多数のシェアを確保している企業向けテレフォニー市場への進出を強化している。

 テレフォニーシステムのIP化の流れを受けて、コールセンター向けシステムで培ったVoIPやメール、メッセージングなどの手段の統合や、これらの手段を活用していくためのノウハウを組織内コミュニケーションの新たな展開に生かせるというのが同社の主張だ。

 上級副社長のギャリー・ブロウ氏は、「顧客からのフィードバックを社内の必要な人物へスムーズに届けるというプロセスは、組織内コミュニケーションでも全く同じこと。われわれは、それに必要な複数の機能を1つのソフトウェアプラットフォームで提供できる」と話す。

 同氏によれば、ユニファイドコミュニケーションを実現しようとしても、既存の電話やメールなどのインフラを維持したままでは、それぞれの機能を連携するための仕組みを新たに追加しなければならないのが現状だという。同社のCICプラットフォームは、電話やメール、メッセージング、SIP処理、PBX連携、管理者機能などが1つに集約され、必要な機能のライセンスを購入すればいいとしている。

 導入に際しては、ネットワークのトラフィック状態を考慮してQoSを設定している。既存のPBXやAvaya、CiscoなどのPBX製品とも連携が可能。「必要なソフトウェアを有効にするだけでIPベースのシステム環境へ円滑に移行できる。サーバやPBXを買い足すというコストは基本的に発生しない」(同氏)

 同社は約3000社への導入実績があり、主要顧客はBMWやVolvo、Motorola、IKEA、Amwayなど。国内では新生銀行も名を連ねる。IP-PBXは約4000台が稼働中だという。

連絡プロセスの自動化

 同社では6月をめどに「Communications Based Process Automation」という、コミュニケーションプロセスの自動化を実現する新たな製品を投入する。コミュニケーションプロセスの自動化とは、顧客からの問い合わせ対応や従業員同士のやり取りなどで発生した情報を、必要な相手へ最適な手段で自動的に提供するという。

 例えば、まず企業の代表番号へ電話があった場合、クレームを訴える顧客であればコールセンターなどのサポート窓口へ接続する。社内関係者あてなら、本人へ転送したり、不在応答したりする。さらにコールセンターで受けた内容を社内の関係部署へ伝達するなどのシーンまでを含めて、一連のプロセスをほぼ自動的に処理する。

CICを中核としたシステム構成イメージ

 Communications Based Process Automationでは、設定されたプロセスのシナリオをベースに自動化するためのテンプレートを用意しているほか、業務アプリケーションとの連携を通じてコールセンターや社内環境におけるプロセス管理が可能になる。現在は米国の保険企業数社がテスト運用を実施中であり、プロセスの自動化によって人手を介することで生じる連絡の漏れや遅れを回避でき、生産性向上や業務効率化が図れるとしている。

 「自動化できるプロセスの内容は企業や部署によってまったく異なる。今後はプロセス自体の定義や自動化に必要な技術対応を含めて高度なコンサルティングが必要になる。われられだけでなく、各国の有力なパートナーと連携して対応していく」(ブロウ氏)

 国内では岩崎通信機や伊藤忠テクノソリューションズ、豊通シスコム、JALインフォテックと提携している。テレフォニーシステムに加え、今後はビジネスプロセスの自動化(BPO)の領域にも踏み込んだ国内企業への提案が可能になるという。

 このほか、MicrosoftのOffice CommunicatorやDynamics CRMとの連携、自社開発によるメディアサーバ機器の投入など、ソフトウェアおよびハードウェアの両面で製品展開を強化する。ハードウェア製品は同社の機能を最適な形で利用してもらうための手段にすぎないという。ブロウ氏は、「今後のテレフォニーシステムで実現するコミュニケーション環境を一つずつ用意していくこともでき、コスト削減と生産性向上のメリットを提供したい」と話している。

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