コラム
» 2009年09月04日 14時24分 UPDATE

IT Oasis:「情報化」と「IT化」の視点を切り分け、喜ばれる提案を作る

「情報化」と「IT化」は、どこが違うのでしょうか――この質問に即座に答えられるだろうか。その違いの中身には、喜ばれる提案を作り出す秘訣が隠されている。

[齋藤順一,ITmedia]

「化」という接尾語の問題

 ある研修会での出来事。

 グループ討議の課題の中に、「現状のビジネスプロセスとシステムの分析結果、および外部の情報化に対する動向とのギャップを分析して…」という文が出てきた少し後に、「IT化の検討をする際には、経営戦略検討と対象となる組織や担当者が変わる可能性がありますので注意が必要です。…」という文章があるのを、目ざとく見つけた人がいた。彼は素早く、「情報化」と「IT化」は、どこが違うのでしょうか、と講師に質問したのだった。あなたなら、何と答えますか?

 「化」というのは接尾語で、名詞やサ変動詞の語幹の下に付いて、「ある状態になること」、あるいは、「ある状態にすること」を表す。ベクトルでいえば、始点が現在で、「〜化」の状態が、終点または、ベクトルの矢印自体ということになるだろう。従って、「化」の対象は、現在時点ではその状態にないというのが前提になる。

 例えば、「男性化」という言葉は、男性には使えない。最近は、生物学的には男性でも、見た目やしぐさが女性のようで、そういう人がいかにも男っぽくなるということも考えられるので、例外的な使い方ができないとはいえないが…。

 また、「化」が付く言葉からは、状態が推定できないと具合が悪い。数詞に付けて「3時間化」とか、抽象名詞に付けて「意思化」などは、あまりピンと来ない表現、というか意味が不明となる。何でも「化」を付ければ状態を表すことができるので便利だが、研究論文などで、これを連発すると添削が入ったりする。他に状態を表す適切な形容詞や動詞があるはずで、名詞+化の多用は、用語が貧困という評価を下されるわけだ。

Technologyの解釈がポイント

 「情報」は、人間の頭に取り込まれて、意思決定や知識となる何かである。何かはその人の外部から到達する。従って、「情報化」とは、そうした人間の意思決定や知識になるような何かの伝達を、円滑にしたり、素早く到達するようにしたり、伝えるべき人に確実に伝えることができる状態にしたり、伝達途中でその「何か」が変質したりするのを防止したりすることである、と解釈できる。

 情報化は、どのようにこれを実現するかは問うていない。コミュニケーションを円滑にするための定例会議、提案制度、「ほうれんそう(報告、連絡、相談)」の励行、組織のフラット化など、種々の手段が考えられる。

 一方、「IT」はInformation Technologyの略で、一般には「情報技術」と訳される。既に、情報という言葉が含まれているのである。Informationと情報が同義かどうかについては、多少議論があるかもしれないが、ここでは深入りしないことにすれば、Technologyの解釈がポイントになる。Technologyとは匠の技ではなく、技術の産物のことである。従って、ITとは、情報を扱う技術を具現化したモノということになる。この時、用いるのは、コンピュータやネットワーク、データベースなどの技術であるということが、暗黙の了解事項である。これに「化」が付くので、「IT化」とは、コンピュータ関連のいろいろな技術を駆使して、情報を上手く扱えるようにすること、となる。

情報化とIT化、そしてユーザーの欲しいもの

 ここまでくると、情報化とIT化の違いも説明できるだろう。

 情報化というのはユーザーの言葉である。ユーザー視点で、情報の流れをどう取扱い、円滑にし、効率を高めるといった事項に関心があるわけである。一方、IT化は、社内の情シスなどのITサービス部門や外部ITベンダーの視点に立った言葉である。情報化をハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどを使って、いかに進めていくかといったスタンスになる。

 情報化は目的に資する言葉であって、IT化は手段に資する言葉であることに注意したい。情シスやベンダーは、手段の提案、実現部門なのである。情シスやベンダーがIT提案をするときは、IT化の本当の目的は何なのかということを、常に意識しておく必要がある。例えばユーザーがExcelを欲しいと言い出したときに、ユーザーは、実はExcelが欲しいのではない。ユーザーが欲しいのはExcelの持つ計算機能なのである。さらに正確にいえば、計算機能で得られる計算結果が欲しいのである。

 ユーザーは、何かを評価するために計算結果が必要なのであり、評価結果を使って意思決定がしたいわけで、できれば、意思決定に対してアドバイスをして欲しい、あるいは適切な意思決定の選択肢が欲しいというのが、本当に求めているところであろう。つまり、Excelを勧めるときは、そこまで考えておく必要があるということだ。

 このことを、マーケティングの研究家のセオドア・レビットは「客は、4分の1インチのドリルが欲しいのではない。4分の1インチの壁の穴が欲しいのだ」と端的に言い表した。

 IT提案をする部署は、ITが手段を具現化するものであることを肝に銘じ、ユーザーが求めている「情報化」というものの本質が何であるかを考えなくてはならない。そこに思いをはせて「IT化」を考え、提案することが肝要である。

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プロフィール

さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、CIO育成支援アドバイザー、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。


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