コラム
» 2009年09月17日 14時31分 UPDATE

Next Wave:Linuxはアジアを目指す

第1回Japan Linux Symposiumが10月に東京で開催される。これが、アジア圏で開催される初めてのLinux Symposiumとなる。Linuxがアジア圏に大きな期待を寄せるその背景には、Linux自体が抱える課題が見え隠れしている。

[石橋真理(ロビンソン),ITmedia]

今やMicrosoftに対抗できるだけのOSに成長

 「これは、リーナス・トーバルズ氏が初めてLinuxの協同開発を呼びかけたときのeメールのコピーだ」

 10月に開催予定のJapan Linux Symposiumに先立ち来日したLinux Foundationのエグゼクティブディレクター、ジム・ゼムリン氏はスライドを示しながら語りはじめた。そのメールの文面には以下のことが書かれていた。

I’m doing a (free) operating system(just a hobby, won’t be big and professional like gnu) for 386(486) AT clones. This has been brewing since april, and is starting to get ready.

- Linus Torvalds. April 25, 1991

plan_JimZemlin.jpg 「今後、Linuxのビジネス的価値は、ますます高まっていくだろう」と語るLinux Foundationのエグゼクティブディレクタージム・ゼムリン氏

 1991年にトーバルズ氏の「趣味」から始まったLinuxの開発は、現在では、多くのLinuxを採用した製品やサービスを誕生させ、世界中の人々の生活に密接に関わっている。

 「8年前、Microsoftは、Linuxへのソースコードの提供を規定したGPLなどとんでもないことだといった。しかし、今年になってMicrosoftは、自らGPLv2のラインセンスでコードをリリースした。これは、現在、そして将来においても、ソフト開発を進める上でLinuxはなくてはならない存在だということを実質的に認めたことを意味する。今では、多くの人が毎日のようにLinuxベースの製品やサービスを利用しているが、それはあまり意識されていない」とゼムリン氏はいう。

 現在、Linuxの活用は、コンシューマ・エレクトロニクス、エンベデッドからスーパーコンピュータに至るさまざまな領域に広がっており、もはや、その普及のスピードと採用領域は、トーバルズ氏自身にもその実態を把握しきれないほどだという。

1000万行を超えるソースコードの価値は1兆円

 Linuxの母体となるLinux Kernelは、今日、そのソースコードが1000万行を超え、これをスクラッチから作りあげた場合の値打ちをIT企業のコスト基準で換算すると、なんと100億ドル、つまり日本円にして約1兆円の価値があるとされている。

 Linux Kernelには、過去1年間で270万行のソースコードが追加され、現在も毎日、約1万行のソースコードが世界中のLinux開発者から追加されている。さらに追加するだけでなく、品質を上げ、バグフィクスするために既存のコードを捨て、新たにコードを書き変えるなどのブラッシュアップも同時に行われている。それら取り除かれるソースコードだけでも、毎日、5000行にも上るという。

 Linuxの開発は、トーバルズ氏を中心とするコミュニティーによって進められており、約1000人の開発者がこれに関わっている。そして、彼らのほとんどは企業にフルタイムで雇用されており、その数は200社にもおよんでいる。これらの企業は、Linuxを活用するために法的なストラクチャーや開発の仕組みを構築している。彼らにとって、Linux開発は趣味ではなく、ビジネスそのものであり、そのビジネス的価値は5兆円にも上る。「しかも、その価値は今後さらに高まっていくはずだ」とゼムリン氏は話す。

 ゼムリン氏が指摘する通り、世界経済が低迷する中で、Linuxは確実に成長し続けているといえるだろう。5、6年前には10%程度に過ぎなかったスーパーコンピュータにおけるLinuxのシェアは、今やその90%を占め、スパコンにLinuxを使うことは、もはや常識となった。また、サーバはもとより、モバイルフォンなど、組み込みの分野でもLinuxのシェアがますます高まることが予想されている。その拡大の道筋は、サーバへの採用で学んだ道をたどりながら、それ以外の製品や分野への普及が進んでいく様相を呈している。

Linuxの今後の成長領域を担うアジアでの課題

 Linux Foundation Japanは、これまでLinuxの普及を促進するべく、3年間で10回もの国内関係者向けのシンポジウムを開催してきた。今年の10月21日から3日間にわたり、第1回Japan Linux Symposiumが東京で開催される。これはLinux Foundationが開催する大規模な技術カンファレンスで、アジア圏で開催される初めてのLinux Symposiumとなる。それにあわせて10月18日から20日かけて、第9回 Linux Kernel Summit(カーネル・サミット)も同時開催される。そこではリーナス・トーバルズ氏を筆頭に100人のLinux開発者が一堂に会する予定だ。

 「今回、Linux Symposiumを日本で開催する背景には、日本およびアジア地域において、今後のLinuxの成長を担うと目されるエンベデッドやモバイル、そしてコンシューマ・エレクトロニクスの分野での活用が増えていることに対する意識がある」とゼムリン氏はいう。また、Linuxの活用の増加とともに、これらの地域でのLinux開発への貢献が急激に活発化したことももう1つの理由だ。

 今年、6月10日にリリースされたLinux標準カーネル「2.6.30」では、NTTデータの原田季栄氏らが開発を進めてきたセキュリティ拡張機能「TOMOYO Linux」、NTTサイバースペース研究所の小西隆介氏らが開発してきたファイルシステム「NILFS」など、日本企業が開発を進めてきたプロジェクトの成果が採用され、Linux関係者の間で話題となった。

 しかし一方で、Linux開発の需要に比べて開発者のリソースが不足していることも課題となっている。最も開発貢献が多いのは北米で、次に欧州となっており、日本と周辺のアジア各国は、それにまだおよばないのが現状だ。

 Linux側の期待は、携帯電話やテレビなどへの採用が急激に進み、活発な開発競争が行われている日本、中国、台湾、韓国などのアジア各国で、今後、さらに企業のLinuxの活用と開発への貢献が促進されることを見込んでいるところにある。

 また、今回のJapan Linux Symposiumのセッションでは、「ウィキノミクス」の共著者であるアンソニー・ウィリアムズ氏の講演やIBMのLinux戦略を成功させたダン・フライ氏が参加するパネルディスカッションも予定されている。そこでは、オープンソース開発のコンセプトを適用した産業の台頭や、企業におけるオープンイノベーションの実現にLinuxが果たす役割について、議論が展開される見込みだ。

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