クラウド時代のデータベース新潮流

三菱東京UFJ銀行に聞く――Oracle 11g R2はどうなのかクラウド時代のデータベース新潮流

複数のグリッドで稼働するデータベースを統合できる「Oracle Database 11g Release 2」のβテストを行った三菱東京UFJ銀行システム部 基盤第二グループの担当者に話を聞いた。

» 2009年11月11日 11時11分 公開
[ITmedia]

検証で重視した3つの機能

 日本オラクルは、9月にデータベース製品の最新版「Oracle Database 11g Release 2」(11g R2)を発表した。複数のグリッドで稼働するデータベースを統合できる本製品のβテストを行った三菱東京UFJ銀行システム部 基盤第二グループの担当者に話を聞いた。

植杉氏(右)と三菱UFJインフォメーションテクノロジーの鈴木暢氏

 基盤第二グループが行っているのは、三菱東京UFJ銀行全体で活用できるベストプラクティスとして、標準的な情報システムの利用法を策定することだ。これにより、多数のプロジェクトを横断して情報を共有できるため、複数の担当者が同じことを考えずに済む。さらに、情報のフィードバックをすることで、常に最新の情報が蓄積されていくことになる。それぞれがプロジェクト固有の検討材料に集中していけるようになるわけだ。

 同グループの調査役で、アプリケーションエンジニアの植杉正樹氏は、統合共通基盤というチームに属している。銀行全体に共通するシステム基盤の構築を推進する部署だ。その中でも特にOracle Databaseを、三菱UFJインフォメーションテクノロジーの鈴木暢氏とともに担当しているという。

 植杉氏は11g R2のβテストにあたり、あらかじめ検証する機能を絞った。具体的には「データ圧縮」「暗号化」「ファイルシステム」の3点である。

より効率の上がったデータ圧縮

 「データ圧縮」に関しては、11g R1でOLTP圧縮機能が、11g R2でColumner圧縮機能がサポートされており、その比較検証を行ったとのこと。検証の結果、Columner圧縮機能では大幅なデータ圧縮が行われることが分かり、「今後使っていけるのではないか」と評価している。

 ただし、この機能が「Oracle Exadata」にのみ対応している点については改善を求めたいとする。検証チームでは、Exadataに限らず、圧縮機能がいろいろな環境で使えるようにしてほしいとOracleに要望を出していると鈴木氏は語った。

 また、用途を限って使うことで効果が出るのではないかと語る。膨大なデータを参照するよりも、小さく圧縮されたデータを参照する方が、当然処理速度は速くなる。特に、その効果は参照系システムで発揮されるのではないかと指摘する。データを頻繁に更新するものに関しては、圧縮する際に相応の負荷が掛かるからであると指摘していた。

 データ圧縮によってディスク容量を減らすという作業が、コスト削減が求められる中で、1つのトレンドになるのは間違いなさそうだ。

暗号化した方が処理が高速

 暗号化に関して、11g R1で検証した際、通常の暗号化されていない領域よりも、暗号化している領域の方が良いレスポンスを得られるというおかしな動きをしていたという。今回の検証では、その点が改善されているかどうかを再確認した。その中で「列の暗号化」と「表領域の暗号化」という2つの機能について再検証した。

 通常、暗号化していれば展開などに手間が掛かるため、レスポンスは非暗号化領域よりも悪くなりそうなもの。だが、結果は逆だった。11g R2の検証の結果、その点は変化していなかったのだ。

 もともと11g R2に関しては、暗号化についての新機能、改善点には入っていなかった。つまり、今回の検証作業では、11g R1での挙動の再確認がメインだった。

 暗号化するということは、その作業の際に必ず負荷が掛かるものだ。その負荷が掛ってでもデータを守りたいという意図があるからこそ行うものといえる。しかし、暗号化した際のアーキテクチャの方がよりレスポンスを改善できるというのであれば話は別だ。非暗号化のアーキテクチャを採用している領域を含めて、暗号化のアーキテクチャに移行した方が効率が良くなるのではないかと植杉氏は考える。この要望もOracleに伝えているという。

改善するファイルシステム

 10g以降に、ASMを使ったファイルシステムが出てきた。Oracleのグリッド技術の中核的な機能として、複数のサーバが持つリソースを1つの大きなプールとして利用できるRAC(Real Application Clusters)が挙げられる。

 これまでのRACでは、データベースについては複数サーバ間で共有できるものの、各OSが標準で提供するファイルシステムを共有することは他社製品を使わない限りできなかった。結果的に、せっかくデータベースを共有できても、ファイルシステムについては各サーバごとに保持しなくてはならず、煩雑な作業が発生していたという。

 11g R2では新たに、ファイルシステムを含めて共有できる機能「ACFS(Automatic Storage Management Cluster File System)」を導入しており、三菱東京UFJ銀行はその検証を実施した。結果、想定通りにファイルシステムを共有できた。分散系のシステム間だけでなくメインフレームとの間でも情報をやり取りできるようになれば、利便性は高まる。「本番で使える」という感触を得たとしている。

グリッドへの展開について

 また、Oracleは、11g R2でグリッド間連携をできるようにした。例えば、営業系システムを稼働させているグリッドと、CRM系システムを稼働させているグリッド間が連携させることで、仮にCRM系システムに負荷が掛かった場合に、余裕のある営業系システムのグリッドからリソースを借りて処理を続けることができるのだ。

 植杉氏は採用する可能性があるとする一方で、個々のシステムのピーク性を管理しないといけないと指摘する。同時間帯でピークがかち合った場合にどうなるかなどといった組み合わせの検証も、今後必要になるだろうとしている。

 今回の検証結果として、「11g R2」が「使える」データベース製品であることは分かったと同時に、幾つかの改善点も浮上した。しかしこれは、製品に対してユーザーが何を期待しているかという話でしかないとも語ってくれた。お互いにフィードバックすることで、相乗効果が生まれるとしている。

企業向け情報を集約した「ITmedia エンタープライズ」も併せてチェック

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ