勝ち残る企業のWebプロモーション

1日に1万匹のペットが飼い主と出会う――仮想空間アメーバピグ

AKB48メンバーが登場したりペットを飼えるようになったりと、この秋、進化を遂げたアメーバピグ。「登録ユーザーの活性化が収益の改善につながる」というサイクルも生じているようだ。

» 2009年11月17日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]

 仮想空間「アメーバピグ」の登録ユーザー数が150万人を突破した。この秋にはAKB48学園エリアテレビ朝日ランドを開設。またこれまで仮想空間内で扱えるのは、自分の分身たるアバター(ピグ)に限られていたが、新たにペットを飼えるようになった。こういった施策が、ユーザーの純増のみならず、既存会員のアクティブ化や収益の向上につながっているという。

AKB48が登場――ほかのアーティストも興味を示す

サービスを担当する山崎ひとみプロデューサー。取材中にも山崎氏の(ピグの)部屋にお母さんのピグが登場。「家族のコミュニケーションにも使っている」と話す

 「ユーザーを飽きさせないよう、知恵を絞っている」――サービスを担当する山崎ひとみプロデューサーはそう話す。アメーバピグ内における、ユーザーのコミュニケーションのあり方は、確実に広がりを見せているようだ。

 AKB48学園エリアでは、単にAKB48のファン層が集うというだけでなく、グループのメンバーである前田敦子さんがステージに登場し、“ピグでライブ”をしてみたり、ユーザーに直接話しかけたりという、直接的なコミュニケーションが図られた。「アメーバピグの会員増につながった」と山崎氏は評価する。

 アーティスト(AKB48)側も、同時期にリリースしたシングル「RIVER」が約18万枚の売り上げを記録し、オリコンチャートの週刊ランキング1位を獲得(AKB48としては初のこと)。山崎氏は「確実にシナジーが生まれた」と振り返る。しかも一時的な効果で終わるのではなく、オリコンチャート1位獲得を記念し、AKB48メンバーが、アメーバピグ上でユーザーに謝意を伝えたり、8時間限定で販売された1位獲得記念の“うちわ”が6万個も売れたりといった流れが継続したという。

 「ほかのアーティストからも(AKB48と)同種の取り組みができないか、引き合いが来ている」と話す山崎氏だが、運営側が仕掛ける施策以外にも、最近(10月28日)サービスリリースされた「ペット」機能で、さらなるユーザーのアクティブ化を狙っている。

ファンに謝意を伝える前田敦子さんのピグ(画層=左)と、ステージで歌うAKB48メンバーのピグ(画像=右)

ペットがユーザー同士を結ぶ触媒に

 ペット機能の概要はこうだ。ユーザーは、自室に複数のペットを飼えるが、現状はイヌとネコに加え、パンダとなる。ペットにはそれぞれ性格が設定されており、食事をあげたり、“なでなで”といったコミュニケーションを図ることで、飼い主(つまりユーザーのピグ)との親密度やゴキゲン度が変化する。親密度が上がると、なでたり、食事を与えたりする以外にも取れるアクションが増え、より深くペットと交流できるようになる。「ペットという存在のおかげで、あえて他人(ほかのピグ)」と会話しなくても、仮想空間を楽しめる」(山崎氏)

 ちなみに、飼うペットを決める方法は「ウイザード形式で決める」といった味気ないものではない。ペットを飼いたいユーザーはまず、ペットが集まる牧場へ行く。そこにはさまざまな性格や性別、毛色を持つペットがおり、その中から飼うペットを決める。仮想空間とはいえ、“世界で一匹だけの自分のペット”ということになる。「ユーザーがよりペットに感情移入できるような仕組みを考えた」(山崎氏)

 ちなみに、パンダは極めてレアなペットとして登場することがあるという(見つけるにはもちろん、足しげく牧場に通うしかない)。

 また(現在は代々木公園エリア限定だが)飼っているペットは同時に1匹まで、外に連れ出せる。自分のペットはもちろん、他人のペットもなでてあげられるため、そこから会話が成立することもある。「仮想空間とはいえ、面識の無いユーザー同士がきっかけもなく会話を始めるのには、心理的抵抗があるだろう。ペットをきっかけにコミュニケーションが活性化されれば」と山崎氏は狙いを示す。

 ペットは1匹当たり780円を超える課金アイテムとなっている(パンダは1200円だという)。決して低い金額というわけではないが、初日に1万匹以上のペットが“飼い主を見つけた”という。ユーザーの活性化や交流促進を果たす触媒であると同時に、事業の柱としての成長も期待できる数字だ。「予想を大きく超えた数字。売り上げがうんぬん、というより飼い主が感情移入してくれるようサービスを考えたら、結果がついてきたという感じ」(山崎氏)

現状はイヌとネコ(加えてレアキャラのパンダ)に限られるが、今後種類は増やす予定

 なお「収益」という面では、「半年以内をめどに、企業とコラボレーションしたプロモーション(広告)展開を図る」と山崎氏は見通しを示す。ただし「ユーザーに楽しんでもらえるプロモーション展開であることが、大前提」(山崎氏)という方針のため、慎重にコラボレーション先を検討している段階だという。

 比較的新しい分野と考えられるインターネット広告だが、そのモデルは大きく変容しようとしている。ユーザーを囲い、活性化することで、Webプロモーションの受け皿にもなるアメーバピグも、インターネット広告の「1つの進化の方向」を示すのだろうか――。

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