プライベートクラウドは企業IT刷新の“真打”になるか――楽でセキュアでコスト削減を目指す

「所有」と「利用」の良いとこ取り――VPN+ホスティングの将来性プライベートクラウドの新たな解(3/3 ページ)

» 2009年12月09日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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セキュリティやサービスレベルの課題にも

 VPN+ホスティングサービスは、VPN網とホスティングとの直結によってパブリッククラウドにつきまとうセキュリティの不安を軽減していることは先に触れたが、もちろん個別のVPN接続サービスやホスティングサービスと同等、あるいはそれ以上のセキュリティレベルが期待できる。例えば一般的なホスティングサービスにあるような、マルウェアや不正アクセス、迷惑メールやフィッシングなどへの対策もメニューとして用意されているほか、内部統制対策としてメールアーカイブなどの機能もある。

 そして、今後もさらに登場するであろう新たなセキュリティ要件に対しても、事業者次第ではあるが、迅速な対応が期待できる。事業者としては、そういった要件をサービスとして迅速に取り入れ、メニューを強化していこうとするはずだからだ。もちろん、そのような事業者側の姿勢は、ユーザーにとっても大きなメリットとなる。数々のセキュリティ機能を自社で個別に構築・運用していったのでは負担が増えるばかりだが、すでに利用しているサービスにオプションとして追加するだけで済み、手間もコストも大幅に節約できるというわけである。

 また、サービスレベルの面でも、事業者次第ではあるが同様に高いレベルが期待できる。一般的にみてxSP事業者やホスティング事業者は、災害対策の整ったデータセンターを備えていることはもちろん、安定運用の実績やノウハウの蓄積も豊富、しかもインフラ多重化などの対応も容易としていることが多い。つまり、信頼性・可用性の高いインフラを安価に提供できるのである。

 ユーザー企業が自力で高度なセキュリティやサービスレベルを確立するには、多大なコストと多数の優秀なスタッフが必要となる。だが、セキュリティやサービスレベルに関してもコストパフォーマンスは無視できないはずだ。信頼できる事業者を選び、豊富なサービスメニューを活用することで、コストや人的負担を軽減しつつ、十分なレベルを維持できる。

自社専用のIT環境を「利用する」という考え方

 以上、ざっと一般的なVPN+ホスティングサービスの概要を紹介してきた。まだ登場したばかりのサービスであり、事業者によってもサービス内容にさまざまな違いがみられるが、発展性や将来性を考えるなら、まさにこれから広まるであろうサービスといえよう。

 もちろん今後も、技術の発展や事業者間の競争を通じて、サービス内容や価格などの面で、より充実されたものとなっていくことだろう。より多彩なアプリケーションのメニュー化も期待される。

 クラウドコンピューティングは、仮想化技術の進歩によって、さらに発展していくものだ。例えば、サーバ環境の仮想化が進めば、社内サーバから事業者サービス上へのアプリケーション移行や、さらには事業者間の移行も、アプリケーション環境を維持したまま可能になる可能性が考えられる。今後登場するであろう新たな技術への対応も、このような手法で実現できるのではないだろうか。

 自社でIT資産を「所有する」のでは、コストがかかり迅速な変化も難しい。しかし単に「利用する」だけでは、不安や不満が残ってしまう。これらの要素はトレードオフの関係にあり、なかなか双方のメリットを両立できるものではなかったが、VPN+ホスティングサービスは、中間的な形態から両立を目指した取り組みとして期待できる。

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