セールスフォース・ドットコムが先週発表したForce.comのOEM展開は、クラウド市場に大きなインパクトを与えそうだ。特にシステムインテグレーターは事業転換の加速を迫られそうだ。
セールスフォース・ドットコムが12月15日、同社のPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)「Force.com」を日本のITベンダーにOEM供給するパートナープログラムを発表した。その時点で、NEC、富士通、日立ソフトウェアエンジニアリング(日立ソフト)など11社がOEMパートナーに名を連ねたことも明らかにした。
「OEMパートナープログラム」と呼ぶ新たな施策は、OEMパートナーであるシステムインテグレーターやISV(独立系ソフトウェアベンダー)が、Force.com上で開発したアプリケーションを自社ブランドで販売できるようにしたものだ。
OEMパートナーは、セールスフォースがSaaSとして提供しているCRM機能を除いたForce.comの全機能を利用でき、開発したアプリケーションを独自のブランドや料金体系で販売できる。ISVにとっては、開発したアプリケーションをシステムインテグレーター経由で再販するといった使い方も可能だ。
システムインテグレーターやISVがForce.com上で開発したアプリケーションの販売については、これまでもセールスフォースが提供する「AppExchange」という仕組みがあったが、AppExchangeの場合は顧客企業がセールスフォースと利用契約を結ぶ必要があった。それが今回のプログラムでは、顧客企業が契約する相手はOEMパートナーだけで済む形になる。
セールスフォースの宇陀栄次社長は会見で「今回のプログラムによって、OEMパートナーはForce.com上で開発したアプリケーションを自社ブランドで自社のサービスと組み合わせて自分たちのサービスとして提供できるようになる。価格も自由に設定できるので、各社ごとに有利な形で展開できるようになる」と、システムインテグレーターやISVにとってクラウド事業への参入を加速できる施策であることを強調した。
さらに、同氏はこう訴えた。
「われわれやGoogleなどが先行しているクラウドに対し、寡占化を懸念する見方があるが、われわれも寡占化を求めているわけではなく、すべての企業にチャンスがあるべきだと考えている。その意味では今回のプログラムによって、OEMパートナーの顧客ベースやアプリケーション開発のノウハウを生かしたサービス提供が可能となる。クラウドをきっかけとしたバックオフィスの再構築といった需要もあり得る。またISVにとっては、日本だけでなくグローバルにビジネスを展開できる可能性もある。クラウドビジネスが小さなマージン商売ではないことを、ぜひ知っていただきたい」
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