CCC、ダスキン、アルクに学ぶ企業Twitterの経験則

カルチュア・コンビニエンス・クラブ、ダスキン、アルクネットワークスの担当者が集まり、B2C向けTwitter活用の成功事例を披露した。ユーザーを巻き込むアイデアや真摯な対応が、企業Twitterの成否を分けるようだ。

» 2010年04月28日 14時12分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 デジタルガレージは4月27日、「Twitter Showcase:企業マーケティングにおけるツイッター活用とその工夫」と題したイベントを開催した。Twitterの企業アカウントを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、ダスキン、アルクネットワークスが集い、B2C向けTwitter活用の成功事例や担当者が心掛けるべきポイントなどを紹介した。

企画力1つでフォロワーは増やせる――CCC

 CCCは2010年2月から、Twitterアカウント「TSUTAYA_CCC」を運用している。運営サイト「TSUTAYA online」への誘導数の増加を狙い、2カ月弱で9500人以上のフォロワーを獲得した。

 TSUTAYA_CCCの仕掛けはこうだ。ユーザーが同アカウントに「クイズ」という言葉を含むリプライを投げ掛けると、映画に関連するクイズが出題される。クイズの答えの部分が誘導リンクになっており、クリック先はTSUTAYAオンラインの映画ページだ。ボットを活用してクイズを出題し、人手を極力介さないようにしている。

TSUTAYA_CCCの企画案TSUTAYA_CCCの企画概要 TSUTAYA_CCCの企画案(左)と企画概要(クリックで拡大)

 「ユーザーからの(クイズ1問の)要求に対し、回答リンクのクリック率は700%だった」。同社のTwitter活用の企画立案を手掛けたフロムイエロートゥオレンジの飯野賢治代表取締役は手応えを感じている。200%と想定していたクリック率をはるかに超える成果が得られたからだ。

 飯野氏は成功の秘けつとして、(1)ユーザーが自ら要求した情報に付いたリンク、(2)クイズの答えをユーザーがRT(リツイート:引用)したくなる点、(3)ユーザーとCCCのアカウントをフォローする別のユーザーが存在する点――の3つを挙げる。ボットによるTwitter運用の成否を分けるのは、企画力やアイデアの作り込みだ。ユーザー側が行動を起こしたくなる仕掛けを盛り込むことで、クリック率やRT数は増やせる。

 Twitter活用における心掛けとして、CCCでは「利用者のタイムラインを汚さないこと」(飯野氏)を意識している。情報を波及させる手立てとして、フォロワーのツイートをRTすることも考えたが、ユーザーのタイムラインがCCCのツイートで埋まる恐れもある。「クイズの要求があった場合のみ、リプライをする」という姿勢を徹底し、フォロワー数の減少を防いでいるという。

フロムイエロートゥオレンジ 飯野賢治氏カルチュア・コンビニエンス・クラブ 松本健太郎氏 フロムイエロートゥオレンジの飯野賢治氏(左)とカルチュア・コンビニエンス・クラブ ネット事業本部 統括 松本健太郎氏。アカウントの運用を手掛ける松本氏はTwitterの価値について、「リアルとの親和性、消費行動との関係性、制限のあるユーザーインタフェース設計」を挙げる

マニュアルで担当者の応対レベルを底上げ――ダスキン

 掃除・衛生用品のレンタル・販売サービスを展開するダスキンは、期間限定でTwitterを活用し、顧客支援の強化につなげた。19年間続く電話相談窓口「年末おそうじ相談室」という顧客サポートにおいて、2009年にTwitterを取り入れた。

 目的は、インターネットで情報を収集する人向けに、相談窓口を提供すること。気軽に相談できる場所をネット上に設けて応対数を増やし、従来の訪問販売で築いてきた顧客との結び付きをTwitterでも強化したいと考えていた。

DUSKIN_OSOUJIによる応対件数の増加 DUSKIN_OSOUJIによる応対件数の増加(クリックで拡大)

 2009年12月17日から28日に「DUSKIN_OSOUJI」というTwitterアカウントを運用し、清掃を中心とする問い合わせを受け付けた。Twitterからは189件の問い合わせがあり、電話対応(767件)と合わせて956件の顧客応対ができた。この件数は2008年の約3倍に上る。

 成果が上がったポイントとして、ダスキン 広報・広告部 広告室 副主事の上村淳一氏は「応対マニュアルの作成」を挙げる。同マニュアルでは、Twitterでどういった対応や返答をするべきかをまとめている。これにより、Twitterに不慣れな担当者の応対レベルの底上げにつながったという。

 ユーザーからの質問や意見には「必ず返事をした」と上村氏。ユーザーのツイートをむやみにRTせず、「返事をいただいた順にリプライを返していった」。また、清掃関連の情報配信や他社サービスの紹介など、配信するツイートに工夫を凝らした。

ダスキン 上村淳一氏 ダスキンの上村淳一氏

 運用に当たり、応対件数やフォロワー数に加え、ユーザーからの意見もつぶさに分析した。当初はTwitterによる顧客サポートについてユーザーから消極的な意見も届いたが、細かな対応を重ねるうちに「応援や(アカウントの)継続希望のツイートが見られるようになった」(上村氏)。

 Twitter活用のデメリットとして、コミュニケーションを継続する人件費を挙げる企業も多い。だが上村氏は「必要経費と考えるべき」と力を込める。

炎上させない工夫と気遣い――アルクネットワークス

 「英辞郎 on the Web」を運営するアルクネットワークスは、2009年5月にTwitterアカウント「eow_alc」の運用を始めた。アカウントを運用するマーケティング本部 ポータルサイトグループ 英辞郎担当 澤麻紀氏が、自社サービスや商品の関するツイートを配信。現在約9700人のフォロワーを獲得している。

アルクネットワークス 澤麻紀氏 アルクネットワークスの澤麻紀氏

 Twitter活用の目的は、「英辞郎 on the Webのファンを醸成すること」(澤氏)。具体的には、利用者のサイト訪問率や同サイトが提供する各種機能の認知度の向上を視野に入れている。

 澤氏はTwitter運用を続ける中で、企業のTwitter活用に有効な経験則を導き出した。例えば「フォロワーの反応が良い時間帯にツイートすること」。澤氏は、企業ユーザーが昼食に向かう「11時55分」や帰宅時間が近づく「17時55分」などを狙ってツイートを配信し、誘導数を引き上げているという。

 「(ツイートの)切り口や角度によって、(ユーザーに)刺さる情報は異なる」(澤氏)ことも発見した。現在は、1つの機能を紹介する場合、「5種類くらいのツイートをしている」。

 こうしたきめ細やかな対応を支えているのは、「フォロワーはお客様である」(澤氏)という意識だ。Twitter慣れしていないフォロワーのタイムラインを独占しないようにツイートのペースを調整したり、むやみなRTを控え、リプライによる返信を心掛けたりしている。間違った情報をツイートした場合はすぐに謝罪するなど、真摯な対応を崩さない。

eow_alcの運営で工夫していることeow_alcの運営で気をつけていること eow_alcの運営で工夫していること(左)と気をつけていること(クリックで拡大)

 直近では、iPhoneアプリ「英辞郎 on the WEB for iPhone」のプロモーションをTwitterで行い、App Storeのランキングで1位を獲得した。澤氏は「顧客との関係をしっかりと作ってきたから」と振り返る。「Twitterの魅力は、関係作りができたフォロワーに瞬発力を持って情報を配信できる点だ」

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