Rackspace、オープンなクラウドプラットフォーム「OpenStack」を発表NASAも協力

Rackspaceは、OpenStackソフトウェアを使うことで、企業は物理的ハードウェアを拡張性の高いクラウド環境に変えることができるとしている。

» 2010年07月21日 11時49分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 米Rackspace Hostingは、オープンソースのクラウドプラットフォーム「OpenStack」を発表した。同社によると、このプラットフォームの狙いは、標準技術の登場とクラウドの相互運用性を促すことだという。

 Rackspaceは7月19日付のプレスリリースで、自社のパブリッククラウド製品である「Cloud Files」と「Cloud Servers」のベースとなるコードをOpenStackプロジェクトに寄贈することを明らかにした。Rackspaceによると、同社はクラウドホスティングサービス分野で業界第2位のプロバイダーだという。

 Rackspace Cloudの共同創業者ジョナサン・ブライス氏は米eWEEKの取材に対し、OpenStackプロジェクトでは、「NASA Nebula Cloud Platform」のベースとなる技術も採用される予定だと語った。同氏によると、RackspaceとNASA(米航空宇宙局)は共同技術開発を積極的に進め、全世界のオープンソースソフトウェア開発者の取り組みの成果を活用する考えだという。

 「今日の科学技術計算では、ますます大量のストレージと強力な処理能力をオンデマンドで提供することが求められている」――NASAのIT担当CTO(最高技術責任者)を務めるクリス・ケンプ氏は発表文でこのように述べている。「この要求に応えるために開発したのが、インフラ型クラウドプラットフォームのNebulaだ。これはNASAの科学者および技術者のニーズに対応するよう設計されている。NASAとRackspaceは、大規模なクラウドプラットフォームの開発経験、そしてオープンソースを採用したいという意欲に基づいてこの構想を推進するという特別な関係にある」

 NASA Nebulaは、NASA Ames Research Centerを拠点とするクラウドコンピューティングサービスで、ハイパフォーマンスコンピューティング、ネットワーク、データストレージといったサービスをNASAの科学者や研究者に提供する。Nebulaを利用することにより、NASAは大量の科学データを共有・処理できる。NebulaはNASAのオープンガバメント計画の3大プロジェクトの1つだ。

 OpenStackは、「Rackspace Cloud Files」をベースとする完全分散型オブジェクトストア(OpenStack.orgから入手可能)などのクラウドインフラコンポーネントで構成される。2番目のコンポーネントとなるのは、NASA Nebulaクラウド技術とRackspace Cloud Servers技術をベースとする拡張型コンピューティング・プロビジョニングエンジンだ。ブライス氏によると、これは年内にリリースされる見込みだという。

 「当社のクラウドプラットフォーム上で動作するソースコードを公開する作業を担うグループを結成した」とブライス氏は話す。

 Rackspaceによると、OpenStackソフトウェアを使えば、どんな企業でも物理的ハードウェアを拡張性の高いクラウド環境に変えることができる。現在、これと同じコードが、数万社の顧客企業および大規模な政府プロジェクトで実運用されているという。

 Rackspaceでクラウド事業担当社長兼最高戦略責任者を務めるルー・ムーアマン氏は「業界標準の推進、ベンダーロックインの回避、クラウド技術のイノベーションの促進を目的としてOpenStackイニシアチブを立ち上げた」と発表文で述べている。「この取り組みでNASAの支援が得られたことを誇りに思っている。NASAのNebula Cloud Platformは、OpenStackコミュニティーを大きく後押しするものだ。NASAおよびOpenStackコミュニティーと当社との間で進行中のコラボレーションが、民間部門と公共部門でのクラウドの普及とイノベーションを促すのを期待している」

 RackspaceとNASAは、それぞれのクラウドプラットフォームの基盤としてOpenStackを使う方針を明らかにしており、Rackspaceでは企業ユーザーおよびサービスプロバイダーでのOpenStackの導入を支援するために、オープンソース開発者とリソースを投入する予定だ。

 「この取り組みに際して、幾つかのオープンソースプロジェクトやグループを検討したが、われわれが必要とするレベルの拡張性を提供しているものは見当たらなかった」とブライス氏は語る。「その次にNASAのコードを見て、すっかり気に入った。しかもそれはわれわれが好んで使うPythonで書かれていた」

 Rackspaceで技術アライアンスマネジャーを務めるブレット・ピアット氏によると、7月13〜16日にテキサス州オースティンで開かれた同社主催の「OpenStack Design Summit」には100人を超える技術アドバイザー、開発者、創設メンバーが集まり、コードを検証するとともに、プロジェクトのロードマップを確認したという。このイベントには、米AMD、米Autonomic Resources、米Citrix、米Cloud.com、米Cloudkick、米CloudSwitch、米Dell、米enStratus、米FathomDB、米Intel、英iomart Group、米Limelight、米Nicira、NTTデータ、米Opscode、カナダのPeer 1、米Puppet Labs、米RightScale、米Riptano、米Scalr、米Sonian、米Spiceworks、米ThoughtWorks、米Zenoss、米Zuoraの25社の企業が参加した。

 Dellでサーバプラットフォームを担当する副社長兼ジェネラルマネジャーのフォレスト・ノロッド氏は発表文で「効率改善に役立つクラウドコンピューティングの選択肢を顧客に提供することが重要だと考えている」と述べている。「Dellのシステム上で稼働するOpenStackは、オープンソースのエンタープライズクラウドソリューションを開発するのための素晴らしい選択肢だ」

 Citrix Systemsのデータセンター&クラウド部門のピーター・レバイン上級副社長兼ジェネラルマネジャーも、やはり発表文を通じて「OpenStackはクラウド標準の登場とクラウドの相互運用性を促進する強固な基盤を提供する」と語っている。「Rackspaceの古くからの技術パートナーであるCitrixは、コミュニティーとの緊密な共同作業の下で、XenServerプラットフォームおよび当社のクラウド支援製品のフルサポートを提供するつもりだ」

 OpenStackのコードはOpenStack.orgからダウンロードできる。コードの寄贈などの協力も同サイトで受け付けている。

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