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» 2010年10月04日 08時35分 UPDATE

Weekly Memo:「富士通マーケティング」設立の舞台裏

富士通グループの中堅市場向け事業を担う中核会社「富士通マーケティング」が10月1日に発足した。当初の再編計画から丸1年遅れた新会社設立の舞台裏には何があったのか。

[松岡功,ITmedia]

富士通グループの中堅民需事業を担う中核会社に

 2010年10月1日に社名を「富士通マーケティング(FJM)」に変更した富士通ビジネスシステム(FJB)が9月29日、今後の事業方針について記者会見した。FJMのミッションは、富士通グループの中堅民需市場向け事業を担う中核会社として市場責任を負い、商品力強化に取り組み、パートナー企業とともに事業拡大を図っていくことにある。

 会見に臨んだ富士通の生貝健二副社長はFJMについて、「これまで富士通グループには、中堅市場に対する統合した組織や機能がなかった。これをFJMに統合し、中堅向けソリューション開発機能を持つ製販一体会社にするとともに、中堅民需ビジネスにおける販売パートナー支援機能を一層強化した体制にした」と語った。

 FJBはこれまで大手および中堅民需への直販を中心にソリューション事業を展開してきたが、新生FJMではこれに中堅民需向けの商品企画・開発およびパートナー支援事業が加わった格好だ。

 このため、商品企画・開発では富士通から異動した150人の開発スタッフとFJBの商品開発部隊120人を融合した組織を10月1日付けで発足。また、パートナー支援では富士通の東名阪地区パートナー支援部隊約100人を同日付けでFJMに移管した。

 FJBから引き続いてFJMの陣頭指揮を執る古川章社長は、中堅民需ビジネス拡大に向けた重点施策として、クラウド時代を見据えた商品力強化、中堅クラウドサービスの展開、パートナーとのコラボレーションなどを挙げた。

 クラウド時代を見据えた商品力強化では、業種・業務ソリューション「GLOVIA smart」を中核とする中堅民需向けパッケージ商品の品ぞろえや機能強化、およびパートナーとのソリューション連携強化を図っていく構えだ。また、新商品としてSaaS型業務アプリケーション「GLOVIA smart きらら」をラインナップした。

 さらに中堅ITサービス商品の強化も行い、インフラ構築・運用からオフィス環境整備まで15カテゴリ・167種類からなるサービス商品や、顧客の要望にワンストップで対応するセット商品を10月から新たに提供開始する。

 中堅クラウドサービスの展開では、パートナーに富士通グループの中堅クラウド基盤を提供するほか、GLOVIA smart きららとパートナーが持つソリューションとの連携、さらにパートナーの保有するデータセンターを活用したGLOVIA smart きららの展開などを図っていくという。

 記者会見で質疑応答に臨む富士通の生貝健二副社長(左)と富士通マーケティングの古川章社長 記者会見で質疑応答に臨む富士通の生貝健二副社長(左)と富士通マーケティングの古川章社長

当初の再編計画が丸1年遅れた最大の理由

 パートナーとのコラボレーションでは、販売、商品、調達、リソースの4つの領域において多面的なコラボレーションを展開する。特に販売面では、「MAST(mid-Market Strategy Team)」と呼ぶ新パートナー支援プログラムを活用し、パートナーと共同で中堅民需ビジネスの拡大に努める構えだ。

 古川社長によると、MASTはパートナーのビジネス目標を共有し、その達成に向けた取り組みを強化するもので、ターゲット市場の選定や面の攻略、Webマーケティングによる顧客開拓などを共同で行うとともに、きめ細かい支援メニューを用意。これにより、顧客への提案力強化や商談のスピードアップ、そしてパートナーの利益に貢献していきたいとしている。

 FJMではこうした取り組みにより、FJBとしてあげた2009年度の売上高1380億円を、2015年度には3000億円まで拡大する計画。このうち中堅民需市場向けの売上高は、2009年度の富士通グループ合計1390億円に対して、2015年度は2000億円を目指す。また同市場におけるシェアも、2009年度の10%(推定)から15%に引き上げたい考えだ。

 こうして見ると、新生FJMは中堅民需ビジネスに向けて万端の準備を整えてきたように受け取れる。ただ、パートナーから見ると直販も行うFJMに対しては、自分たちのビジネス領域を脅かされるのではないか、との疑念を抱くのは当然の心理だ。また、かねて富士通と直接取引を行ってきたパートナーにとっては、FJMが間に入ることのメリットがはっきりしないと、納得できるはずがない。

 富士通がFJBを完全子会社化し、グループとしての中堅市場向け事業の再編に乗り出したのは2009年5月。当初は同年10月に体制を刷新する予定だった。同年9月に起こった元社長辞任問題による影響もあったとみられるが、当初の再編計画が丸1年遅れた最大の理由は、パートナーからの強い反発にあった。

 会見で「FJMとパートナーが同じ商談でぶつかったらどうするのか」と問われた古川社長はこう答えた。

 「そうしたことを起こさないように、昨年5月以降、パートナーとの間でさまざまな問題を解消すべく尽力してきた。パートナーからすれば、新会社がどんな支援をしてくれるのか、自分たちのビジネスにどうプラスになるのかが、当初は明確になっていなかった。そうした支援策や商品の品ぞろえを1年半かけて行い、パートナーから共感を得られるようになり、今日を迎えた」

 古川社長はさらにこう続けた。

 「現時点で富士通グループの中堅民需市場におけるシェアは10%しかない。言い換えれば90%の大きな潜在市場がある。パートナーにはここをお互いに協力しながら攻めていきましょう、と時間をかけてお話ししてきた」

 その結果、FJMに対するパートナーの懸念はかなり薄れてきたという。「あとはこれから実際に事業を進めていく中で、しっかりと支援していけるか、きちんと商品を出していけるかに尽きる」と語る古川社長は、会見を通して幾度も次の言葉を繰り返した。

 「中堅民需ビジネスは、富士通とFJMだけが奮闘しても絶対に大きくできない。その成否の鍵を握るパートナーとのコラボレーションに、FJMは誠心誠意尽力していきたい」

 「富士通がFJBを完全子会社化した理由」と題した2009年5月25日掲載の本コラムで、最後にこう書いた。

 「これまで直接販売を主体としてきたFJBが“立ち位置”の変わる間接販売をどこまでマネジメントできるかは未知数だ」

 今回、ようやく新生FJMが誕生した。だが、未知数であることに変わりはなく、真価を問われるのはまさしくこれからだ。シェア拡大も大事だが、ここはひとつ、FJMには日本の中堅企業のIT化を大きく推し進める、との気概で臨んでほしい。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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