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» 2010年10月12日 08時15分 UPDATE

Weekly Memo:国産ITメーカー“御三家”は世界で存在感を示せるか

グローバルな合従連衡が進むIT業界で、国産メーカー“御三家”といわれる富士通、NEC、日立製作所の動向が注目されている。3社が世界で確固たる存在感を示す手立てはあるか。

[松岡功,ITmedia]

日本市場に存在する4つのIBM

 NECと日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が10月6日、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)分野においてGPU(Graphics Processing Unit)を活用した高い演算能力を実現する計算インフラの提供で協業を始めると発表した。

 この協業は、東京工業大学の次世代スーパーコンピュータシステム「TSUBAME2.0」の構築実績に基づくもので、NECのSI力およびアプリケーションの性能チューニングに関するノウハウと、HPのGPU搭載サーバを組み合わせ、大学や研究機関を対象としたHPC向けGPUソリューションとして提供していくという。

 詳細な発表内容はすでに報道されているので、関連記事などを参照いただくとして、この発表でNECとHPの関係がさらに深まっていることを強く感じた。

 翌7日、マイクロソフトがエンタープライズビジネス戦略について会見を行い、執行役常務エンタープライズビジネス担当の平野拓也氏が、組織改革への取り組みや顧客企業の事例紹介、今後の事業方針などについて説明した。

 こちらも詳細な会見内容はすでに報道されているので、関連記事などを参照いただくとして、ここでは平野氏のパートナービジネスに関する発言をピックアップしておきたい。

 米Microsoftのグローバル市場での販売戦略は直接販売を主体としているが、日本法人は間接販売に徹している。その理由を問われた平野氏はこう答えた。

 「海外と違って日本市場には、“4つのIBM”ともいわれるライバルが存在するからだ。加えて強力なITサービス企業も数多くあり、日本独自の商流や商習慣を形成している。そうした企業と強いパートナーシップを築いていかないと、日本市場で成功することはできない」

 4つのIBMとは、富士通、NEC、日立製作所、そして日本IBMのことだ。マイクロソフトに限らず外資系IT企業の大半は、平野氏の発言のように日本市場をとらえている。従って、日本市場でビジネスを展開するとなると、特に国産メーカー“御三家”といわれる富士通、NEC、日立製作所と取り引きしたいと動く。そうした背景から、御三家はそれぞれ、共同研究・開発といった技術面も含めて多くの外資系IT企業と協業関係を築いている。

 マイクロソフトのエンタープライズビジネス戦略について語る平野拓也執行役常務 マイクロソフトのエンタープライズビジネス戦略について語る平野拓也執行役常務

Oracle&FUJITSU、HP&NEC、IBM&HITACHIに期待

 ただ、その協業関係の多くは、日本市場でのビジネスを対象にしたものだ。グローバルな合従連衡が進む中で、御三家が世界で確固たる存在感を示しているかといえば、疑問視せざるを得ない。

 とはいえ、御三家ともグローバル事業の拡大には、これまでにも増して力を入れている。3社の中期経営計画にはいずれもグローバル事業の拡大が重点施策として盛り込まれており、海外売上高比率で見ると、富士通が2010年3月期37.4%から2012年3月期40%へ、NECが同19.9%から2013年3月期25%へ、日立製作所が同20%から2016年3月期35%へと伸ばす計画だ。

 3社はそのために、それぞれ海外での事業体制を強化しつつあるが、これからはグローバルなパートナーシップを強化することも重要なポイントになってくる。

 例えば、富士通ではその点でも意欲的に動いており、この1年あまりの間に、今後キーとなるクラウドサービス事業拡大に向けて、メジャーなIT企業だけでも10社に上るグローバルパートナー契約を結んでいる(関連記事参照:Weekly Memo「IBMとHPを追撃、富士通のグローバルパートナー戦略」)。

 しかし、今起こっているグローバルな合従連衡は、もっとダイナミックだ。背景には、クラウド時代に向けて大手IT企業が垂直統合ビジネスモデルを構築しようという動きがあるが、これはまさしくグローバルでのパワーゲームだ。御三家は、果たしてそのパワーゲームで確固たる存在感を示していけるのか。

 企業向けクラウドサービスとしてインフラからアプリケーションまで展開し、オンプレミス(自社運用)向けにもハード、ソフト、サービスを総合的に提供できるグローバルなメジャープレーヤーといえば、IBM、HP、そしてSun Microsystemsを買収したOracleなどに絞られる。富士通、NEC、日立製作所もこの一角に名を連ねたいところだ。

 そこで期待したいのは、富士通とOracle、NECとHP、日立製作所とIBMが、それぞれさらにパートナーシップを深めることだ。この3つの組み合わせに共通しているのは、ミッションクリティカルなサーバ分野で長年の戦略的協業関係を築いてきたことだ。それぞれにそうそうたる顧客企業が名を連ねており、パートナーシップの根は深い。

 いずれも補完関係などなさそうに見えるが、Oracleにとって富士通のSIを含めたITサービス力は大きな魅力のはずだ。HPにとってのNECも同様だろう。IBMにとっての日立製作所は、ITサービス力に加えて社会インフラ整備の分野でも強力なパートナーになるはずだ。

 一方、富士通、NEC、日立製作所にとってのメリットは何か。最も大きいのは、パートナーのグローバルブランドを生かせることである。

 Oracle&FUJITSU、HP&NEC、IBM&HITACHIといったダブルブランドが、世界のIT市場をリードする時代が来ないものか —— NECと日本HPの協業会見を聞いて、そんな思いが頭の中をめぐった。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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