スマートテレビ戦国時代を制するのは誰だ!オルタナティブ・ブロガーの視点

スマートテレビ戦国時代がやってくる! 源氏(ベンチャー)は、平家(テレビメーカー)の既存勢力を打ち崩せるのか。オルタナティブ・ブロガーの山崎秀夫氏が、日本“以外”の国のスマートテレビ活用状況を解説しつつ、今後を占います。

» 2010年10月14日 16時13分 公開
[山崎秀夫,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「インターネットの第二の波とソーシャルメディアマーケティング」からの転載です。エントリーはこちら。)

序文

 ついにGoogle TV(ソニー版とロジテック版)の正式出荷が発表され、プレオーダーの受け付けを始めました。

 すでに米国で販売されるテレビの25%はインターネット対応テレビになっています。その中の25%ぐらいはまったく使われていないというForrester Researchの否定的調査報道もありますが、ソニー米国法人とGoogleが市場を立ち上げたのは間違いないでしょう。2011年にはスマートフォンが米国市場の半分になるというニールセンの予測に従えば、来年は一挙にアップス(アプリケーションのパッケージ)活用文化が全米に広がり、確実にスマートテレビの活用にも波及するでしょう。

スマートテレビの活用状況

 すでに欧米の有料テレビの一部(AT&Tの「ユーバース」、べライゾンの「ファイオステレビ」、衛星放送の「DIRECTV」など)は2009年夏ごろからセットトップボックスに多くのアップスを配置し、スマートテレビ普及に成功しています。

 見逃した番組や、マスターズゴルフ中継や大リーグ中継(DIRECTVで100万回近くダウンロードされた)の番組連動型アプリケーション、子供たちが喜ぶサンタ追跡アプリ、Twitterやフェイスブック、コーラーIDというテレビ電話を使ったソーシャルテレビアプリなどで成果が出ています。

 そういった背景を前提として考えれば、Forrester Researchのスマートテレビ再評価も納得がいきます。一般テレビにおけるスマートテレビ活用は、Forrester Researchがいうようにこれからですが。

スマートテレビ市場への準備

 3Dテレビ市場の広がりが眼鏡やコンテンツの問題で遅い中、3Dテレビに否定的な欧州の放送業界は、独仏の「HbbTV」、英国の「YouView」(旧プロジェクトキャンバス)などアップス活用型のインターネットテレビ=スマートテレビを前提とした動きをすでに実践しています。その結果、世界中のメーカーはすでにデジタルテレビにアップスを投入し、ネットと電波をマッシュアップするスマートテレビへの準備を整え終わっています。

 それではまず日本メーカーから見てみましょう。ただし、対象市場は欧米ですのでお忘れなく。日本メーカーの国内市場での対応との大きなギャップに驚いていただけたらうれしいです。これは日本市場の後進性を意味します。

 国内メーカーは国内市場では、3Dテレビと録画時間しか言わないですよね。

国内メーカー 採用しているスマートテレビサービス
東芝 ヤフーコネクトテレビ
三洋電機 VUDUのサービスとアップス活用開始
三菱電機 ストリームテレビ(100個のアップス)
パナソニック ビエラキャスト
シャープ アクオスネット(多数のアップス)
米国メーカー 採用しているスマートテレビサービス
ビジオ ビジオインターネットアップス(ヤフーコネクトテレビ)
韓国メーカー 採用しているスマートテレビサービス
サムソン電子 インターネット@TV(ヤフーコネクトテレビ)
LG電子 ネットキャスト(ヤフーコネクトテレビ)
欧州メーカー 採用しているスマートテレビサービス
フィリップス ネットテレビ

 ご存じでしたか。ソニーだけではなく、ほかの日本メーカーも完全に日本を気に留めていない状況です。それは日本市場に先進的サービスへの先駆的な市場性がないと判断したからでしょう。

 欧米市場を立ち上げれば、確実に日本は「物まねフォローする」という判断ですね。スマートテレビで日本を後進市場とみなすということは、日本はインターネットでも遅れているという意味でもあります。なぜならば、USTREAMなどで立ち上がった「ソーシャル視聴」がテレビに広がらない、ネットで閉じた閉鎖的な縦割文化が日本社会だと見ているからでしょう。欧米ではソーシャル視聴はネットだけのものではなく、スマートテレビ用アップスのキラーアプリの1つに考えられています。

スマートテレビ戦国時代の始まり

 約1000年前に貴族政治に反対して武士の世を作り上げた鎌倉幕府はよく知られています。しかし戦いの最初の狼煙を挙げたのは、平家に仕える三位源頼政でした。この平治の乱により全国の源氏が立ち上がりました。その中に信州の木曾義仲や伊豆の源頼朝がいたのです。

 さて、すでに各地の源氏はスマートテレビへの準備を整えています。最初に狼煙を挙げたのは、Apple TV改訂版とGoogle TVでした。テレビの世界でアンドロイドのようなオープンソースの強さやアップスの有効性が問われるわけですね。PopBox、Boxee Boxといったベンチャー企業や、有料テレビの仇役としてにらまれているNetflixなども源氏陣営に加わります。

 それに対して、平氏(テレビメーカー)は、それぞれが組み手を決めて準備を整えています。

 このように、すでに米国というグローバル共和国の首都においては戦いが始まっており、2010年秋からは、いよいよ本格的なスマートテレビ戦国時代に突入します。

 そして2011年春にもグローバル共和国の辺境である、スマートテレビ後進国の日本での戦いが始まります。iPadはコンテンツで書籍業界がかかわったとはいえ、まだまだ新規領域の戦いでした。しかしスマートテレビは既存のテレビメーカー、テレビ業界という、いわば倒幕がかかわります。

 書籍業界の次は確実に放送業界でしょう。そして戦いの大変さはUSTREAMの比ではないでしょう。逆黒船である青い眼のソニーが担ぐGoogle TVは、太平の眠りにつく日本国内にどんな影響を与えるのでしょうか。楽しみですね。

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