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» 2010年11月18日 11時30分 公開

「買う」と決める瞬間:1ドルの売り上げにかかる秒数 (2/2)

[大里真理子,ITmedia]
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スチュー・レオナルドの奇跡

 買い物客の行動原理に基づいて店舗設計を改革し成功した事例として、米国の生鮮食品中心のスーパー「スチュー・レオナルド」が挙げられます。アメリカのコネチカット州にある地元のスーパーマーケットで、チェーンストアではありません(家族経営で、現在4店舗)。しかし、徹底したユニークな顧客サービスを行っていることが評判で、国内外の視察団がひっきりなしに訪れています。このお店の繁盛ぶりは、「あまりにも多くのお客が集まるため、消防署から警告を受けた」というほどです。

 スチュー・レオナルドが、多くの顧客を集めている理由は大きく2つあります。どちらも買い物客行動の根本原理に基づいたものです。

1 取扱商品数を2000まで絞り込んだ

 前編でお話ししたように、多くのスーパーは「まとめ買いする顧客を重視する」方針から、3〜5万もの商品をそろえています。しかし、それは「一般的な購入品数は1品」という買い物客にとっては、ありがた迷惑でしかありません。本当に必要な商品が、大量の商品の山に埋もれてしまうからです。スチュー・レオナルドは商品数を2000まで絞り込んだことで、「どの商品を選ぼうか」という商品選択の悩みを解消し、買い物のスピードをアップさせることに成功しました。

2 通路を一本道(一方通行)にした

 多くの小売店は、数万種の商品をなんとか買い物客に買わせようとして、売れ筋商品を売れ筋ではない商品の間に隠して陳列しています。このため買い物客は、どの売場へ行くべきか悩み、イライラし、探し疲れる羽目になります。しかし、スチュー・レオナルドは、店舗内に商品の間をうねりながら走る1本の幅の広い通路を作りました。この通路のおかげで、買い物客は「次はどの売場へ行けばいいのか」という悩みから解放され、買い物のスピードをさらに加速させることができました。

 ちなみに、スチュー・レオナルドの経営方針は次のようなものです。

わたしたちのポリシー

  • ルール1 お客さまは常に正しい
  • ルール2 もしお客さまが間違っていると感じたら、ルール1を読み直せ。

 We so believe in a satisfied customer that we carved our philosophy into a three ton granite rock(わたしたちはお客さまの満足につながると信じ、このポリシーを3トンの花崗岩に刻む)

成功するお店とは

 真の成功するお店とは、3タイプ(急ぎの買い物、買い足し、まとめ買い)の買物行動のうち、急ぎの買物に焦点を当て、「商品が多すぎて何を選んだらよいか困る」と「商品が探しにくくどの売場へ行けばいいのか分からない」という彼らの買い物での悩みを解消し、1ドルの売り上げにかかる秒数を短くしたお店ということができるでしょう。

 ソレンソン氏も、これから成功するのは適切な商品を、それを求める買い物客に適度な時間内に提供できるように、効率よく売場を管理できる小売店だと断言しています。日本のコンビニエンスストアは、まさしく急ぎの買い物に特化した小売店の成功例と言えるでしょう。

 本書では、今回紹介した例に加え、買い物客のニーズにスーパーが応える上で必要なデータや考え方を多数紹介しています。興味のある方は、書店で手にとってご覧ください。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

成功するお店を作るポイント

  • お客さまの買い物効率を追及した店舗ほど、売り上げ高が増える
  • 買い物効率を上げるには、買い物客の行動原理に基づいた店舗設計が重要
  • お客さまの時間を節約するために、取り扱い商品数を厳選すること
  • 人間工学的な特徴を踏まえたうえで、買い物客の歩く道筋を考え商品を並べること
  • 徹底的にお客さまのことを考えること

「買う」と決める瞬間

「買う」と決める瞬間

著:ハーブ・ソレンセン、監訳:株式会社テイラーネルソンソフレス・インフォプラン、訳:大里真理子/スコフィールド素子

ダイヤモンド社

2010年9月10日

ISBN-10: 4478012768

ISBN-13: 978-4478012765

1890円(税込み)

ブランドや広告が効かなくなり、「買い」は売り場で決まると言われる今、「ショッパー・マーケティング」の第一人者が、「消費者」(店の外にいる人)と「ショッパー」(店内にいる人)を明確に区別した上でショッパーの行動(視線の動き、通路の進み方など)を最新技術を用いて観察、従来の常識を覆すショッピングの科学


プロフィール 大里真理子(おおさと・まりこ)

大里真理子

アークコミュニケーションズ 代表取締役社長。

「目指せグローカルなビジネスコミュニケーション!」をモットーに、Web/クロスメディア制作・翻訳/通訳/ローカリゼーション・ライティング・人材派遣/紹介を営む。
「ITmedia オルタナティブ・ブログ」の「マリコ駆ける!」を執筆中。twitterのアカウントは@marikokakeru


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