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» 2011年02月21日 08時05分 UPDATE

Weekly Memo:セールスフォースが語る中小企業のクラウド活用の決め手

中小企業にとってメリットが大きいとされるクラウドサービス。実際の普及度合いはどうなのか。今後の活用ポイントは何か。セールスフォース・ドットコムに聞いてみた。

[松岡功,ITmedia]

リーマンショック後に対前年比50〜60%伸長

 クラウドサービスは、IT資産を持たずに低コスト・短期間で導入でき、専任の担当者も不要なことから、とくに中小企業での普及が急速に進むと見られてきた。

 誤解のないように断っておくと、ここでいうクラウドサービスは、パブリッククラウドの領域で、中でもSaaS(サービスとしてのソフトウェア)の導入が手始めとなる場合が多い。

 そのSaaSとしていち早く市場を形成しつつある業務分野はCRM(顧客情報管理)だ。アイ・ティ・アールが先頃まとめた調査によると、SaaS型CRMの国内市場規模は2010年度で112億円を超え、前年度比15%伸びる見通し。この市場をけん引しているのが、セールスフォース・ドットコムの「Salesforce CRM」である。

 そんなSaaS型CRMを皮切りとしたクラウドサービスだが、実はメリットが大きいはずの中小企業にまだまだ受け入れられていないのではないか、との見方もある。

 果たして実際の普及度合いはどうなのか。中小企業における今後の活用ポイントは何か。セールスフォース・ドットコムで中堅・中小企業向け事業を推進する福田康隆 執行役員コーポレートセールス本部長に話を聞いてみた。

 セールスフォース・ドットコムの福田康隆 執行役員コーポレートセールス本部長 セールスフォース・ドットコムの福田康隆 執行役員コーポレートセールス本部長

 福田氏によると、同社のクラウドサービスを利用する顧客のおよそ8割が従業員数1000人未満の中堅・中小企業で、「この市場だけでも、日本ではここ2、3年、契約金額ベースで対前年比50〜60%の高い伸びを記録している」という。

 親会社である米Salesforce.comのクラウドサービスは、もともと米国市場で中小企業がこぞって採用し始めたのが、同社躍進のきっかけとなった。当初から企業規模にかかわらないことを特徴の1つに掲げてきたのは、日本での展開も同じだ。

 だが日本では、日本郵政グループをはじめとした大口顧客が目立つことから、逆に中小企業へは今ひとつ浸透していないイメージがあった。「当社もそのイメージを払拭し切れていないところがあったかもしれない。だが、実際には順調に伸びている」と福田氏は自信を覗かせた。

 福田氏の発言からすると、2008年秋のリーマンショック後に対前年比50〜60%伸ばしてきたことになる。リーマンショックによる不況到来で、企業のIT投資は冷え込んだ。なのに、なぜ、そんな成長が果たせたのか。

SNSによるナレッジベースが決め手に

 「むしろ、リーマンショックがきっかけとなって、とくに中小企業の間でクラウドサービスのメリットが一段と注目されるようになり、当社への問い合わせや相談が増えた」

 こう語る福田氏は、さらにこの時期に同社のクラウドサービスを導入した中小企業に共通する強い意識を感じたという。

 「コストを抑えたいというのは当然だが、その一方で、あらためて顧客対応を見直し、ビジネスの機会を絶対に逃したくないということで、Salesforce CRMが採用されるケースが増えた。不況の時こそ成長の機会ととらえている経営者の方々が少なくないと実感した」

 さらに、同社のクラウドサービスを導入した中小企業の最近の事例では、設定レベルでカスタムアプリケーションを自ら作成できるPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)「Force.com」を利用してCRMと連携する業務プロセスを自動化したり、ソーシャルコラボレーションを実現する「Salesforce Chatter」を利用して社内や関係者とのコミュニケーションの活性化を図るケースが相次いで出てきているという。

 ただ、こうした中小企業はいわば先進ユーザーで、多くはどうしていいか分からない、またITを有効活用しようという意識が薄いというのが実態だろう。そうした状況を踏まえて、全国地域に販売サポート拠点を持つITサービス会社と、クラウドサービスベンダーが協業するケースも出てきている。

 福田氏もそうした状況は、「当社が伸びているといっても、日本の中小企業市場全体からいえば、クラウドサービスの本格的な普及はまだまだこれから」と認識している。

 では、今後、中小企業がクラウドサービスを導入し活用していくうえで、何がポイントになるのか。福田氏は「ソーシャル」「モバイル」「オープン」という3つのキーワードを挙げ、こう説明した。

 「今後、FacebookやChatterのようなSNSが、企業システムのすべての入り口になっていくのではないか。また、これまでのユーザー会の仕組みにこうしたSNSを活用すると、クラウドサービスによる顧客ノウハウをどんどんナレッジ化して、サービスを一層磨き上げていくことができる」

 「モバイルについては、とくにスマートフォンの登場でクラウドサービスの利用の仕方も大きく変わっていくだろう。また、オープンについては、PaaSが開放されてもっと簡単かつ自由に利用できるようになることが、大きなユーザーメリットになる」

 ちなみに、この3つのキーワードは、そのままセールスフォース・ドットコムの今後の強化ポイントでもある。中でも、クラウドサービスとSNSを組み合わせて利用ノウハウをナレッジベース化し、顧客の間でそれを有効活用していくという取り組みは、新しい発想といえるだろう。

 同社はChatterを使って、まもなくそうした新しい形態の「ユーザー会」を発足させるという。近い将来、クラウドサービスの導入・活用において、そうした仕組みのナレッジの充実ぶりが決め手になるかもしれない。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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