企業のIT投資動向については先週、ITベンダー大手の営業担当役員からも話を聞く機会があったので、その内容も紹介しておこう。
その役員によると、「IT需要は昨年後半から徐々に回復してくると見込んでいたが、実際、第3四半期(2010年10〜12月)は非常に厳しかった。2011年に入って止まっていた商談などが少しずつ進み出した感じはあるが、急ピッチな回復は見込めないだろう」というのが現時点での感触だという。
さらにこうも語る。「今後は国内のIT投資額が右肩上がりに伸びていくことなど期待しないほうがよい。景気回復の見通しがつかないことに加え、クラウドサービスに代表される従量課金型サービスが増えてくると、短期間での投資額増加などますます見込めなくなる」
それでも営業担当だけあって、「クラウドサービスはビジネスモデルとしてしっかりと育て上げないといけないが、一方で社会インフラなどIT活用領域を大きく広げていける絶好のチャンス。そこで勝負の分かれ目になるのは、いかに競合他社より魅力のある提案を素早く行っていけるか。その意味で2011年は非常に大事な年になる」と、最後は攻めの姿勢を印象づけていた。
この役員の話を聞いていて、IT業界のキーパーソンが語った2つの言葉が頭に思い浮かんだ。かつて本コラムでそれぞれに紹介したことがあるが、印象深い言葉なのであらためて記しておきたい。
いずれもリーマンショック後の厳しい時代におけるビジネスの取り組み姿勢を表したものである。まずは、米Microsoftのスティーブ・バルマーCEOが語っていた言葉がこれだ。
「New NormalにはNew Efficiencyが必要だ」
New Normalとは、不況が回復することなく、今の状態が「新しい常態」になることを意味する。このNew Normalを前提に、ITベンダーもユーザー企業もNew Efficiency、つまり「新しい効率性」を追求する必要がある、というのがバルマーCEOの提言だ。
そしてもう1つ、米IBMのサミュエル・パルミサーノCEOが不況後をにらんで語ったのが次の言葉だ。
「勝者は嵐を生き延びた者ではなく、ゲームのルールを変えた者だ」
ゲームのルールを変えるとはどういうことか。その発想の転換が今、ITビジネスに求められているのは間違いないようだ。
ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.